「コロンビアは麻薬と内戦とゲリラの国だと言われるが、逆に、あるいはそのためか、演劇と祝祭の国でもあるのです」
今、南米では軍事独裁政権の歴史を断ち切り、ボリビアのように民衆が支持する政権が次々誕生しているが、コロンビアでは貧富の差が激しく、400万人の農民は強制移住させられ、内戦が続く。
しかしその国で民衆演劇が盛んに行われ、2年に1度開催される「もう一つの演劇祭」には国中から、また南米や世界各国の人々が参加する。
また毎年の「舞台に立つ女性たち」世界女性演劇祭には、南米を中心に多くの女性たちが参加する。
劇団「ラ・カンデラリア」は1966年に発足した。パトリシアさんが大学の芸術科1年の時、演劇を教えていた先生が弾圧を受け大学を辞めた。その時に演劇こそ必要だと感じたパトリシアさんは、自分も退学して劇団創設に参加した。
「それが大切なことだと分かっていたから」
その先生で、共に来日したサンチアゴ・ガルシアさんは、50年代に日本人演出家に演劇を学んだ。独裁政権に共産主義者と知られ追放されるまでのたった3カ月、集中的に教えた佐野碩さんの名は劇場の名として残る。
2年しかもたないと言われた劇団は続いた。最初は観客を集めるのにも苦労し、町で観客を呼び集めた。ラ・カンデラリアは集団制作を実践し、テーマは民衆が置かれている状況を反映したものだった。それは次第に民衆に支持されていった。