映画『わたしは非正規公務員』より
机の上に手書きのメッセージが書かれた紙を1枚ずつ丁寧に並べ、「こうするとみんなで一緒にここに来たみたいでいいかな」と山岸薫さんは言う。紙には「わたしはハローワーク相談員でした。セクハラした人はまだ働いている。私は雇い止め。 なぜ?」「どれだけ仕事を頑張っても 定期的にクビになるのはおかしい!」「気に入らない人を公募で脅迫するのはやめて!」等、切実な叫びと怒りが溢れる。書いたのは、山岸さんと同じ、非正規公務員の仲間たちだ。 山岸さんは10年も関東のハローワーク窓口相談員を務める非正規公務員。その理不尽な労働実態については、「身バレ」すると「雇い止め」になるのを恐れ、当事者は訴えづらい。
そんな中、山岸さんは実名・顔出しで実情を訴えている。昨年には仲間と共に当事者団体「非正規公務員voices」を立ち上げて、ネット上で悩みを語り合う場を作り、今年は、そこで一番語られることが多かったハラスメントの調査を実施、短編映画『わたしは非正規公務員』も制作した。
国・地方自治体合わせて 120万人以上いるとされる非正規公務員。その8割が女性だ。保育士、学校教員、婦人相談員、生活保護相談員等、公務の重要部分でスキルも必要なのに、短期契約なうえ3年に一度「公募」入れ替えがあり、低賃金、退職金や病気休暇はなく、介護・育児休業は実質取れず、常に雇い止めの不安と背中合わせ。 「voices」が実施したハラスメント調査では、「職場では正規・非正規が対等と思うか」に「思わない」が78・9%、「ハラスメントや差別を受けたことがあるか」に68・9%が「ある」と答えた。
山岸さんは、就職氷河期世代。音響技術を学んだが、求人がほとんどなく、やっと就職した関西の映像制作会社は、正規職だが長時間労働で低賃金、雇用保険もなかった。食事も十分に取れず、生理も止まった。
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