(c)落合由利子
11月11日から公開される映画『1%の風景』で監督デビューする吉田夕日さん。1%とは、助産所や自宅で出産する割合で、吉田さんもそのひとりだ。日本では高度成長期の1960年代から病院での出産が急増し、減少し続ける助産所は2021年現在で約2500カ所。うち分娩まで扱うのは325カ所という。 映画にも、分娩の扱いをやめる「みづき助産院」(東京都)が登場するが、その知らせを聞いて、吉田さんは初めての映画作りの決意を固めていった。 「記録だけでも残したい」
吉田さんは2人目を妊娠したとき、友人が自宅出産したと知り、目を丸くした。 「えっ、どうして自宅で?」 すると逆に返された。 「なぜ、病院で?」 考えたこともない選択肢。調べると、自転車で通える距離にに「つむぎ助産所」(東京都)があり、早速に訪ねて驚いた。 「何もかもが病院と違う」 家族が2階に暮らす一軒家で、助産師の渡辺愛さんは白衣ではなく普通の格好で、ゆっくりと話を聞いてくれた。 「病院では妊婦健診のたびに助産師さんがかわり、健診も20~30分程度。不安や違和感があっても、忙しそうだからと気を使い、そもそも何をどう質問したらいいかもわからない」
産後まで同じ助産師さんに伴走してもらえる助産所では、 「健診も1時間かけていろんな話ができて。どんどん自分の体のこともわかっていく。効率や計画性とはまったく違う風景が広がり、目からウロコでした。触診でマッサージしてもらいながらケアを受けることで、体も緩んでいく。人って大切な瞬間に体に触れますよね。誰しも痛いのは怖いけれど、そういう信頼関係があるから、いざ本番となっても一緒に頑張れる」 とはいうものの、先の不安や日々の焦り、言葉にならない感情が涙になって噴き出たこともある。すると渡辺さんがこう声をかけてくれた。「出産は涙もおしっこもうんちも、ぜ~んぶ出てから始まるのよ」
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