(c)落合由利子
今年5月、エイジズム(年齢差別)に関する注目の一冊が出版された。『エイジズムを乗り越える 自分と人を年齢で差別しないために』(城川桂子訳 ころから)。著者のアシュトン・アップルホワイトさんが来日し、本紙もインタビューの機会に恵まれた。事前にネットで見た講演は、説得力があり迫力満点で聴衆をわかせていた。実際にお会いしても歯切れよく熱い語りにすっかり魅了された。
「若く見られたい」「もう年だから無理」「そのお年ですごいですね!」…など、誰もが思ったり、口にした経験があるのではないか。まず自分の中にエイジズムがあることをこの本は教えてくれる。研究書のような堅苦しさがなく、多くの具体例や人々の言葉が紹介され、ユーモアにあふれた啓発本だ。
「高齢者だけに向けた本ではありません。私たち皆がエイジストなんですよ。私たちは子どもの頃から、若さには価値があり、年を取ることは価値が薄れるという考えのもとで育っているからです」とアップルホワイトさんは説明する。 「昔の村社会では人の寿命は短かった。都市化が進むと、教育や労働の中で人は年齢別に区切られていく。都市化を支える資本主義は、経済に貢献できる労働に価値が置かれ、高齢者や家事をする主婦たちが価値の低いものとされる。高齢者は社会の重荷とされる一方、現代では、消費者にもされています」
私たちがする化粧や白髪染めなどはおしゃれの一部だが、エイジズムと資本主義に絡めとられているといえなくもない。 「エイジズムは、世界的な構造的な問題であり、制度や政策、歴史、文化に組み込まれているのです。エイジズムをなくすには、レイシズム、セクシズム、能力主義、同性愛嫌悪など、あらゆる差別をなくさないといけないと本で訴えました」
続きは本紙で...