(c)谷口紀子
6月、ふぇみん主催のツアーで大阪・生野区の鶴橋駅近くのコリアタウンなどを周った帰り、今年4月29日に開館した「大阪コリアタウン歴史資料館」(以下、資料館)を訪ねた。コリアタウンのメイン通りの横道にあり、入り口前には詩人・金時鐘さんの詩が刻まれた「共生の碑」が置かれている。おしゃれなカフェが併設され、吹き抜けのある館内は、明るく気持ちのいい空間。若い人が熱心に展示を見ていた。開館準備に奔走した、朝鮮地域研究が専門の大阪公立大学教員・伊地知紀子さんは、同館理事と副館長を務める。
「大阪コリアタウン」と呼ばれる御幸通商店街は年間200万人が訪れる観光地。かつては「猪飼野」という地名で、近くの平野川の改修工事に従事するため、多くの朝鮮人が来阪した。1920年代、大阪と済州島を結ぶ直行船「君が代丸」が就航したことから、済州島出身者が多いのも特徴だ。
資料館では、この地の歴史がタッチパネル式で読める。古代は港があり百済からの渡来人が住み着いたこと、猪飼野に関連する人物や映画の紹介など、楽しくわかりやすい説明がされている。開館してわずか2カ月、来館者は2000人を超えた。 「〝歴史を学びたい系〟の人が来てるんやと思うんですけど、韓流が好きでも日本の植民地支配とかは知らない人にも入ってもらいたい」と伊地知さん。
「啓蒙するような資料館にしないって決めて、K‐POPやお祭りなどの身近な話題から入って、タイムマシン式に過去の話に遡れるよう工夫しました。歴史に触れる入り口をたくさんつくっときたいんです」
資料館をつくるきっかけは、在日外国人問題に詳しい一橋大学名誉教授・田中宏さんから譲り受けた蔵書や貴重な資料を生かす場、層の厚い大阪の朝鮮人問題に取り組む在野研究者の発表の場所探しから。
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