(c)宇井眞紀子
東京・神宮外苑は広い敷地にいくつものスポーツ施設―東京五輪で新設した競技場も―と、歴史ある建物や森もある。銀杏並木は紅葉が美しく、都心なのに深い緑に囲まれたオアシスのよう。そんな外苑で、スポーツ施設の建て替えと、五輪を機に建築規制緩和された高層ビルの建設や多くの樹木が伐採される再開発計画が進行している。 外苑の100年の歴史が培ってきた環境を破壊するこの計画が本当に必要なのかとChange.orgでオンライン署名を立ち上げたのが、アメリカ人でコンサルタント会社社長のロッシェル・カップさん。
2021年の五輪開催直前、代々木公園にパブリックビューイングの施設を作る計画を知った。「ちょうど五輪開催反対の署名が立ち上がってたくさんの署名が集まったのが注目されたでしょ。日本では署名で訴える手段が好まれると知りました。以前アメリカで開発計画を止める住民活動に参加して成果を得る経験をした。私のTwitterには多くのフォロワーがいて、発信すれば貢献できるかなと、署名を立ち上げました」。これが40万筆以上の署名を集め、中止させる一端となった。 「裸の王様に、王様は裸だ!と言ってしまう性格ですね」
ある時、夜の神宮外苑で銀杏並木を見た。「ビルの谷間なのに緑が豊かで、ライトアップもされて、別世界のようでした」 21年12月に、東京都が外苑再開発計画を公表した。翌年2月に知って驚いた。「計画書面の縦覧期間はたった2週間。都の都市整備委員会の会長は十分議論をし尽くしたと言いましたが、寝耳に水で、〈十分な議論〉って誰がいつ議論したんですか」 そして、代々木公園の署名をした人たちにも背中を押され、22年2月に再開発計画を問う署名を立ち上げた。現在20万筆が集まる勢いで、継続中だ。 カップさんは仲間と定期的に「外苑ウォーク」という現地を案内する取り組みを行い、市民に実際に見て知ってもらう活動をしている。
続きは本紙で...