(c)牧内昇平
昨年11月、福島市にある映画館「フォーラム福島」で1週間、日本初公開となる韓国のドキュメンタリー映画『After Me Too』が上映された。
2017年にSNS上で世界中に広がった、性暴力を告発し連帯する#MeTooは、18年以降に韓国でも大きなうねりとなった。映画は、20~21年に撮影された4人の監督によるアンソロジー。「スクールMe Too」の発端になった女子高校の生徒たちの抵抗と葛藤、幼少期の性虐待を言葉にして、苦しんだ自分を丸ごと許そうとする中年女性、アート・映画・演劇界での#MeToo運動と制作とのジレンマ、マッチングアプリや恋人との「自ら望んだ」セックスの中で感じた暴力…。 この映画にほれ込み、韓国の制作会社との交渉の末、日本での上映を実現させたのが、福島県在住の牧内麻衣さんだ。
牧内さんは、22年1月に#MeTooに関するシンポジウムに参加し、参考映像として見たのがこの映画だった。 「ずっと感じていたモヤモヤを代弁してくれているような感覚があったんです。特別な人ではない人たちこそが、#MeTooを支え、自分の声をいろいろな形で表現している。映画の中で中年女性『幸福』さんが毎日100回『私の体と心は健康になった』と書き綴るように、沈黙の中で叫んでいる人、声を上げられない自分を情けないと責めたりしながら、毎日なんとか生き延びている人がいることを想像するのが大事だと思いました。私もずっと自分の性被害を公にしたり声を上げられなかったのがコンプレックスだったんです。でも生き延びてきたことが大事なんだよって肯定された気がしました」
牧内さんは朝日新聞社の記者だった06年と07年に取材先で性暴力に遭った。1回目は警察関係者、2回目は甲子園出場校の生徒から。被害自体のショック、混乱、自責感等さまざまな感情とPTSD症状が牧内さんを襲うも、朝日新聞社は、事案解明や加害責任の追及、配置転換等の適切な対処をしなかった。牧内さんは休職復職を繰り返した後、19年に退社した。
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