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齊藤俊江さんは、85歳の今も長野県の飯田市歴史研究所の調査研究員をしている。市が運営する歴史研究所は全国的に希だが、その中で在野の研究者として長年飯田下伊那地域の満洲移民や遊郭研究を行ってきた。その成果は地元紙でたびたび紹介され、ふぇみんにも2度登場してもらった(2019年9月5日号、11月5日号)。
読書好きで、高校時代は「外国文学班」に入り、サルトルやカミュなどを愛読。卒業後は本と出会える図書館で働きたいと公務員になる。4年後に飯田市立図書館に配属された。 ちょうど安保反対運動が激しかった時代だった。社会科学系の読書会に参加して出会った本から、女性の経済的自立の重要性を学び、自分も働き続けようと決意する。後輩女性のために保育園開設運動も行った。
図書館で行った活動で今も記憶に残るのは、子どもの読書運動だ。「子どもの読書を、1対1ばかりでなく、大勢の母親と行い学び合う関係が深まりました」と語る。この学び合いの姿勢は、後の研究や活動方法の重要な下地になった。 図書館には、「本の貸し出しのほか、地域に関する書籍・資料を揃える使命があります。地域文化のバロメーターでもあります」と熱く語る。 そして、定年退職直後、地域の史料に詳しい職員として、設立間もない市史編纂室で働き始めた。図書館在職中から、市民の学びの場だった「飯田歴史大学」の講座で、戦前の社会主義的な青年運動や満洲移民に強く関心を持つ。「貸し出すだけじゃなく、自分でも研究したいと思うようになっていったんです」
市史編纂室が飯田市歴史研究所に改編され、歴史研究の専門家が入ってきて刺激を受けた。「なぜ満洲へ移民させられたのか、戦後引き揚げてきた人たちがどんな生活をしたのか、歴史の探究や原因を突き止める研究ができるようになりました」
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