(c)落合由利子
東京都福生市にある「青少年自立援助センター・YSCグローバル・スクール」(YSC GS)は、海外ルーツの子どもへの専門教育支援事業。日本語教育のほか進学対策も行う。教室ではフィリピンなどさまざま国のルーツをもつ子どもや若者が楽しく勉強していた。授業はコロナ前からハイブリッド形式でどこでも受けられる。生徒から〝校長先生〟と呼ばれる田中宝紀さんはここの責任者だ。
田中さんは16歳の時、単身でフィリピンに留学した。 「小学生の頃からいじめに遭うことが多く、学校はずっとつらかったです。高校生の時、フィリピンに遊びに行き、父が〝日本の学校が合わないなら、ここで学校に行けよ〟と。私がこのままだと死んじゃうかもと父も私も思っていたから、これで逃げられると留学しました」
水牛が水田で闊歩する小さな村の一軒家での一人暮らし。電気は1日8時間つけばいいほうで、井戸から水を汲むという生活をしながら学校に通った。 「言葉が話せず、市場でスナック菓子しか買えず、見かねた学校の友達が日替わりで家の夕食に招いてくれて飢え死にせずにすみました。学校や村でちやほやされ、おせっかいに世話を焼かれたのがうれしくて。この経験が活動の原点です」
20歳の時に再度フィリピンに行きセブ島で暮らす。NGOの人々とスラム街を回り、子ども支援を始めた。帰国後に大学に進学し、フィリピンの子どもを支援するNGOを立ち上げたことが現在につながる。 「活動を始めた頃、フィリピン出身の中学生と出会い、彼女には居場所もなく支援もないことに驚きました。それで東京都の助成金を受け、子どもの日本語教育に特化したプロジェクトを実施。それが『虹の架け橋事業』に合うから申請したらと他から声をかけられたんです」
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