(c)江里口暁子
守部吾妻さんが副理事長を務めるNPO法人essenceは、「障害を感じるすべての人に潤いを」をキャッチフレーズに掲げ、「食」を通じて社会と障害のある人をつなぐ事業を行っている。
「 障害とは、社会において「不便や不自由に感じるすべての事象」、障害者とは同じく「不便や不自由を感じるすべての人」と定義する。この定義が多くの人を包摂し、障害は一気に「自分の問題」へと引き寄せられる。
4人の子どもに恵まれた。3番目に生まれた一哉さんが難治性の小児てんかんと診断されたのは生後4カ月の時である。全介助が必要な重度の障害だった。 「当初は落ち込みました。でも同じ重度障害の子どもを育てている先輩お母さんたちがすごく生き生きして明るくて。そこでまず“障害はつらい、大変”と決めつけていた自分の偏見を思い知ったんです」
きょうだいたちはごく自然に一哉さんを受け入れた。寝ていれば一緒に寝転び、座っていれば自分たちも座り、目線を合わせて話しかける。表情や声で気持ちを感じ取ろうとする。きょうだいとしてあたりまえに過ごす姿に、吾妻さんが教えられたという。
地域の幼稚園や小学校から「うちに来ませんか」「彼にとって何がいいかを一緒に考えましょう」と声がかかった時には「感激しました」と今も声が潤む。 しかしそれはかなり限定された幸運であることも身をもって知った。公共交通機関などで、子ども用車いすをベビーカーと思われ、「畳んでください」と言われる。アパレルメーカーが主催するファッションショーに応募すると障害を理由に断られた。体が大きくなってくると、外出先でおしめを替えることも困難になる。一哉さんの成長とともに、社会が決めた枠から「出るな」と言われているように感じることが増えていった。メディアでは障害のある人たちの「負けない」姿が賞賛される。
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