(C)落合由利子
「ボランティアの、上から目線に自分が惨めになった」「俺たちはどうせ忘れられる」
2015年11月。神奈川県川崎市の小さな町、桜本に差別・扇動をまき散らすヘイトデモがやってきた。すぐさま周囲の人たちと立ち上がったのが、桜本で生まれ育ち、「川崎市ふれあい館」で働く崔 江以子さんだった。ふれあい館は地域に戦前から暮らす在日コリアンをはじめ、東南アジアや南米ルーツの人たちの拠所でもある。
「戦争で大変な苦労をして、やっと豊かな老いを迎えた1世のハルモニたちの『日本社会に迷惑をかけたことはないのに、子や孫の代になって、死ね、帰れと。どうして仲よくできないの』『死ね、殺せと言われるんだったら、自ら命を絶つ』と絞り出すような声が忘れられないんです。いのちの重さをいちばん知っている人たちです」
もともと闘うタイプではないのです、と崔さん。けれどもハルモニたち、子どもたちを傷つけるわけにいかない。ふれあい館と差別反対の市民らが作ったのが「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」。できることはなんでもすると決めた。ヘイトデモのカウンターに立つと中学生の息子、中根寧生さんが横に並んだ。
「息子も許せなかったんですよね。小学校に入ったとき、桜の花びらを拾った息子は先生から『誰にあげるの?』と聞かれ、しばらく考えて『ママ』。先生は『家と同じようにオモニと呼んでいいのよ』と息子の気持ちをキャッチしてくれた。学校でもいろんな国の子たちが一緒に学んで。息子は大好きな街を知らない人に壊されたくないんです」
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