もし少子化対策で「惚薬」が開発されて、カラダもココロも売る女子高生が現れたら? 美容整形が発達しみんなが “若く美しく”なったら? 「男」「女」以外の第三の性ができたら? エリートサラリーマンが妊娠したら?…。一見突拍子もない設定が、意識の中に強固に根付く、性、ジェンダー、美醜、母性の神話をあぶり出し、ひっくり返し、「常識」の外にある居場所を指し示す―。そんな漫画を描き続けているのが、坂井恵理さんだ。本紙読者でもあり、連載「おんなのこの現場」(2008年11月25日号~)や、10年新年号「核兵器ゼロへの道」のイラストも描いてくれた。
女のしたたかさも、男のひ弱さも描ききる坂井さん。「スターウォーズとかどんなに広い世界を描いてても、男女の規範はそのまま。私はフェミニズムに救われたところがあるよ」
小さい頃は宇宙飛行士になりたかった。小学校に入り、「私の学力では無理」と悟って、次になりたかったのが漫画家。幼稚園の時に初めて描いた漫画は、出っ歯の女の子「やっちん」が女の子分を引き連れて、悪者と闘うという話。「昔っから女が活躍する漫画が大好き。なんでやっちんが出っ歯なのか分からないけど(笑)」
青年漫画誌でアシスタント募集に応募し、縁あって高校3年生で漫画家柴門ふみさんのアシスタントになった。21歳で男性漫画誌でデビューした。
デビューまでは順調だったが、「何が描きたいか明確にあって漫画家になったわけじゃないないから、そこからどんどん迷った」。男性編集者に言われ、男性ウケする漫画を描いたこともあった。“不思議ちゃん”の女の子が登場し、最後は主人公の男性によって“落ち着く”。読者アンケートの結果はよく、次も同じ路線でと勧められたが、「私は自己主張をしないこの女の子が好きじゃないですって言ったんだよ」。
続きは本紙で...