中東やアラブの人々が肩や頭に巻いている大判のストール、カフィーヤ。白地に黒や赤の格子模様のものが多いが、色彩豊かなカフィーヤもある。それがパレスチナ・ヨルダン川西岸の町ヘブロンに唯一残る織物工場で作られた「ラスト・カフィーヤ」。古い織機で織る素朴な風合いと刺しゅうに、手仕事の特徴が表れている。 日本では北村記世実さんが、パレスチナから直接輸入する。
クリスチャンの北村さんは、もともと聖地パレスチナや海外ボランティアに関心を持っていた。1999年、NGOの駐在員だった友人を、パレスチナ自治区の飛び地でイスラエル軍の弾圧が激しいガザに訪ねたのが最初のパレスチナ体験で、その時は障害のある子どもの支援を手伝った。「2000年の第2次インティファーダ(民衆蜂起)前だったので、ガザは落ち着いていました」
しかし01年に再訪すると状況がすっかり変わっていた。イスラエル軍の攻撃で町が破壊され、滞在中に知り合いが殺された。「3区画くらい先で銃声が聞こえました。3日前、『友達との写真を撮って』とせがむ男性がいたんですが、図々しいなあと撮りませんでした。その男性が殺された。あのとき撮ってあげていれば…。彼を収容する救急車さえイスラエル軍に狙われ、収容には数時間かかりました。でも翌日、周りの様子は平静で…。ガザではこんな異常が日常茶飯事のことなので、気持ちを切り替えないと生きていけないのだろうけど、私にはそんなこともしんどかった」。その体験がPTSDになり、パレスチナの友人にメールを書こうとすると指が震えた。
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