WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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インタビュー

『ぐりとぐら』の絵本作家

中川李枝子さん

  • 2016.1.1
  • 聞き手…柏原登希子
  • まとめ…岡田真紀
  • 撮影…飯田典子

中川李枝子さん

草の根になってしっかり根を張る

 
  • 幼稚園のときに戦争が始まって、国民学校(今の小学校)の2年生になると上野の動物園の猛獣が処分され、学校では遠足も学芸会もなくなった。校長先生が毎朝、朝礼のときに威勢のいい戦争の話をなさる。「日本は今、勝っている。学校に行かれるのも兵隊さんが一生懸命やってくれているおかげだ」「空襲はスパイの仕業。外国の本を読む人、外国語を話す人はスパイだ。スパイに気をつけろ」と。
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  • 本はもう手に入らなくなって、友達と貸し借りしていたの。私は入学祝いに父が買ってくれたアンデルセン童話「五つぶのえんどう豆」をお友達に貸した。そしたら隣のクラスの国民服着た怖い先生が外国の話はけしからんと言って、その本を取り上げちゃったの。もし親に知れたら、学校に返してもらいに行きそうで、父にスパイの嫌疑がかかるんじゃないか。そう考えるだけでおそろしく、誰にも言わないでずっと秘密にしていた。父の書斎には外国の本もあるし、レミントンのタイプライターはあるし、子どもながらにとても不安でしたよ。
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  • 空襲があると危ないからって、おうちと学校以外どこも行っちゃいけない。道草もいけない。すると頭のいい子がいて、出征兵士の家の前で最敬礼するのは、道草ではなくて、軍国少女としていい行いではないかというわけ。それで出征兵士の家や戦死した英霊の家に回って最敬礼。英霊の家では、ここのお父さんは昼間は靖国神社でお仕事して、夜になるとおうちに帰っていらっしゃるんですって、と誰かが言い、ひょっとしてまだおうちにいるかもしれないとのぞいたりして。みんな大真面目だったの。
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  •  明るい話も、楽しいことも何もないから、友達どうしで、「戦争になる前はね」と前置きをして、想像をふくらませて、お母さんがどんなに優しくて、おしゃれしていたかをお話しするのよ。「私のお母さんはひらひらのお洋服着て銀座に行ってダンスしたんですって」とか、みんなうっとりして、想像を楽しんでいたのね。
  •   続きは本紙で...


    なかがわ りえこ

    作家。1935年北海道・ 札幌生まれ。72年まで「みどり保育園」の主任ほぼになる。62年出版の『いやいやえん』で厚生大臣賞、NHK児童文学奨励賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞推奨作品賞を受賞。翌年『ぐりとぐら』刊行。『ぐりとぐら』シリーズのほか、『そらいろのたね』『ももいろのきりん』、エッセイ『本・子ども・絵本』ほか多数。映画『となりのトトロ』の楽曲「さんぽ」の作詞でも知られる

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