地域で子どもたちを見守る
今、子どもの貧困問題が深刻だ。その中で、痛ましい事件も起きている。2月に起きた神奈川・川崎市の男子中学生殺害事件でも、母子家庭の母が長時間働き、誰も子どものSOSをキャッチできなかった。地域で子どもを見守っていこうという動きもある。東京・豊島区で学習支援や子ども食堂をつくった栗林知絵子さんに話を聞いた。
栗林さんは4年前、知り合いのTくんにひょんなことから勉強を教え始めた。ある日ばったり出会ったスーパーで「オレ、公立の高校に入れないかもしれない」というTくんのつぶやきを聞いた栗林さん。中学3年生の夏休みだ。「勉強しにうちにこいよ」と言うと、その晩「ほんとに教えてくれるの?」とドリルをもってTくんが現れた。その日から勉強会が始まった。
Tくんは夕方6時に約束して9時に来ることもある。今まで、約束の時間を守ってもらったことがなかったのかもしれない。夕食も一緒に食べた。Tくんは勉強したことをどんどん吸収していく。受験だからプロの塾にも行かせようと、3カ月後やっと連絡がとれたお母さんに、東京都の塾代サポートのチャレンジ資金を借りてもらい、保証人になった栗林さんは、地域の知り合いによびかけて、カンパを募った。
栗林さんの地域の仲間は「つきあいが悪くなったと思ったら、そんなことをしていたの」「いいことじゃない」という人がほとんどだった。Tくんは無事に工業高校に合格した。
そのTくんの合格祝賀会の集まりが、今の「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」に発展した。
続きは本紙で...
くりばやし ちえこ
1966年大阪府生まれ。新潟・長岡高等専門学校を卒業後、試薬会社勤務。結婚して池袋に住み、プレーパークの活動に参加。2011年豊島WAKUWAKUネットワークを設立、代表に。随時ボランティア募集中。info@toshimawakuwaku.com