子どもの立ち直りを信じて
「『非行』と向き合う親たちの会」は、子どもの非行に翻弄される親たちの苦しみの雨もいつかきっと上がるという願いと確信から、「あめあがりの会」と呼ばれている。20年前、春野さんが親や支援者と4人で立ち上げた小さな会だが、今は北海道から沖縄まで全国に31もの同じような会ができ、全国ネットを作っている。高校生の孫がいる春野さんも、当時は娘の荒れる行動に悩み、生きているのがつらいとまで思いつめたひとりの母親だった。
春野さんは2人の娘、家事を分担し台所にも立つ夫、出版社でのやりがいのある仕事を持ち、大きな問題のない家庭だった。上の娘は幼いころから溌剌として元気いっぱい、小学校ではクラスのリーダー格だった。ところが中学2年生の時、タバコを吸っていたことが分かり、春野さんの人生は一変する。
上級生からいじめを受けていた娘は、逆に威嚇的な不良っぽい態度で自分を守ろうとしたのだ。暴走族と付き合い、深夜の公園で遊ぶ。校則の自由な高校に入学したが、家出、無免許バイク運転、クラブホステスのバイトと、まじめな春野さんには想像もつかない行動が続く。わらにもすがる思いで教育相談所にも行くが、育て方が悪いと責められるだけ。娘との闘いに疲れ果て、「悪い子の親」という周りの冷たい視線が突き刺すが、夫は愛娘の変貌に茫然としている。孤立無援に感じられた。
そんな時、鹿児島県知覧町で中学生がいじめによって自殺し、その加害少年の父も自殺をしてしまった。「死んでお詫びするしかないという、社会から追いつめられる感じはよく分かるんです。でも親が死んだら、その子はどうやって自分がしたことに向き合えるのか」。「ひとりで悩まないで話し合える場所」として会を立ち上げた。
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はるの すみれ
1951年、埼玉県生まれ。編集者。1996年「非行」と向き合う親たちの会を立ち上げる。2000年第1回「非行」を考える全国交流集会。以降毎年開催。2003年NPO非行克服支援センター設立。 http://members3.jcom.home.ne.jp/scojd TEL03(5348)6996