WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • インタビュー

インタビュー

ヘイト(憎悪)を煽る団体を提訴した

李信恵さん

  • 2015.1.15
  • 聞き手…社納葉子
  • 撮影…江里口暁子

李信恵さん

生まれ育った日本に真の安寧を

 
  •  冷たい冬の雨がそぼ降る日、鮮やかな朱色のチョゴリを着た李信恵さんは、大阪地裁の証言台に立った。時折声を震わせながら読み上げた陳述書には、提訴に至るまでの経過と思いが綴られている。傍聴席に鼻をすする音が響く。しかし誰よりも聴くべき相手は来なかった。
  •  
  • 2014年8月、信恵さんは「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と当時の桜井誠会長、まとめサイトの「保守速報」を相手取って損害賠償を求めて提訴した。提訴の理由は2つある。まずは拡大する一方であるネット上のヘイトスピーチをやめさせ、再発を防止したいという思いだ。もう1つは、ネットから路上に飛び出しヘイトをまき散らす団体の責任を問いたいという思いである。どちらも数年にわたって信恵さん自身がターゲットにされ続けてきた。
  •  
  • ヘイトスピーチは、在特会が路上に出て激しい差別活動を行う2009年以前から生まれていた、と信恵さんは振り返る。  「インターネット上のコミュニティーで在日が楽しく交流しているところに踏み込んできて、朝鮮学校を誹謗中傷したり、そこに集まっている人たちに嫌がらせをしたり。自分を守るために在日を名乗るのをやめる人やコミュニティーから去っていく人がたくさんいました」。しかしその時も、在特会が“活動”を始めた時も、「あんな理屈が社会に受け入れられるわけがない」「無視していれば消えていくだろう」と考えていた。「あの時にきっちり叩き潰しておかなかったことをすごく後悔しています」と話す。
  •  
  • 在特会は「よい朝鮮人も悪い朝鮮人も殺せ!」と拡声器で怒鳴りながら町中を練り歩く。デモに警察の「警備」はつきものだが、なぜか「差別をやめ!」と抗議する「カウンター」側ばかりが圧力を受ける。警察に守られながら差別するかのような光景に数えきれないほど泣いた。それでも在特会のデモの情報が入れば現地に出かけ、ビラまきなどの周知活動を行って抗議した。実名で発信するツイッターでどんなひどい言葉を投げつけられてもいったんは受け止め、「歴史をきちんと学んでほしい」と諭す。かと思えば「帰れ!」という罵声に「アホか!ここが私の家じゃ!」と言い返す。
  • 続きは本紙で...


    リ シネ

    1971年、大阪府生まれ。フリーライター。日本人の夫、息子とともに暮らす。結婚や子育てを通じて戸籍や名前、女性であるが故の息苦しさなどの問題意識に目覚める。2014年第10回やよりジャーナリスト賞受賞。15年1月、初めての著書『♯鶴橋安寧』(影書房)を出版。

    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月750円、3カ月2,250円
     6カ月4,500円、1年9,000円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:婦人民主クラブ
    このページのTOPへ