伝え、また知るために、書く私
今の世の中って、学生の目からどんなふうに見えるのだろう。そんなことを思いながら、エッセイ集の著者で大学院生の是恒香琳さんに会いに行った。
原発や集団的自衛権、大学のミスコン問題、性表現などさまざまなテーマを取り上げて分析しており、実におもしろい。
例えば戦争についての文章。
「戦争は渦だ。世の中が大きな洗濯機になるということだ。(中略)全ての人が渦の中でぐるぐる回っていた。そして洗濯機の中で、誰もまっすぐ泳ぐことができないことが、わかった。(中略)だから、二度と洗濯機のスイッチを押してはならないのだ」(「女性情報」2014年8月号)
感性とずれのない視点、身体感覚に訴えかける表現は秀逸。
優等生に見える。しかし、先生の思惑を読み取ることが苦手だったという。いつ役立たずとして、先生に冷遇されるかと、毎日が不安で、必死だった。
子どものころから戦争と人権は身近なテーマだった。
小学校3年生の時、学級崩壊した。担任は若い男性だ。ある日、先生は「ざまあみそ漬け。たくあんぽりお」と叫んだクラスメイトを突然殴り飛ばし、蹴った。授業中、みんなが見ている中での事件だった。
ところが、先生は「覚えていない」「勝手に転んだ」とシラをきり、無罪になった。子どもたちが「見た」と学校に訴えても相手にされなかった。大勢の子どもの前で行われた暴力は、なかったことになったのだ。
子どもは人間ではないと知った。自分がどんなに叫んでも、誰も取り合ってくれず、助けてくれないのだ。他人事でなかった。自分で先生の犯罪を立証するしかないと考えた。母の本棚から、ポケット六法を引っ張り出し、日本国憲法と出会った。
理不尽なこととは闘ってもいい。強者の暴力によって支配される筋合いはない。憲法は不安な学校生活の拠り所となった
続きは本紙で...
これつね かりん
1991年、東京都生まれ。日本女子大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科史学専攻に在学。著書刊行後も切り抜き情報誌「女性情報」(共にパド・ウィメンズ・オフィス)にエッセイ「井戸の果てからこんにちは」を連載中。