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インタビュー

原発被災者を演じた女優

紀奈瀬衣緒さん

  • 2014.05.25
  • 聞き手…岡田真紀
  • 撮影…落合由利子

紀奈瀬衣緒さん

芝居は人間を描き社会とつながる

東京の三鷹武蔵野芸能劇場に「ふるさと」の歌の切ないハーモニカの響きが流れる。今年4月初めに上演された、藤田傳作「天下御免 想定外」の舞台。原発事故被災者の避難所を思い起こさせる段ボールが並ぶ。酪農家を演じる90歳の女優、紀奈瀬衣緒さんが牛をなでるしぐさには、牛をいとおしむ情感があふれでている。夫は原発事故後、深い絶望のもとに自死したという設定である。紀奈瀬さんはこれを最後の舞台と決めていた。  初日の2週間前、作者の藤田傳さんは81歳で世を去った。「(仮設避難所の)段ボールの中で息を引き取った老婆に代わって私が筆を持った」とプログラムに書いている。国と東電への怒り、放射能によって故郷を追われた人の哀しみを書かずにはいられなかった藤田さんの想いは、芝居をプロデュースした紀奈瀬さんの想いでもあった。  紀奈瀬さんは3・11以来、原発関連の新聞記事を取り置いて読みこみ、報道写真展にも足を運んだ。そして、昨年秋、福島県富岡町を訪ねた。  「お店のカーテンが半分開かれていて町はそのまま。だけど人っ子ひとりいない。放射能という見えないものの恐ろしさ、不気味さを感じましたねえ。除染した土を入れた黒い袋がたーっと並んでいる。除染がすむまでなんて、老い先短い年寄りはもう故郷に帰ってこられないだろうなって」   現地に身をおいて聞いた「一番不安なのは未来が見えないことです」という言葉は、紀奈瀬さんの心に重く沈んだ。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じ取ったものは体と心に染み入り、自分自身のものとなって舞台での表現となった。 続きは本紙で...


きなせ いお

1924年、東京・池袋生まれ。東京大学伝染病研究所に勤務。演劇と出合い辞職し、舞台芸術学院、新演劇研究所等を経て演劇活動。一時中断するが謡曲・狂言を習う。82年から継続的に一人芝居を始め、92年から藤田傳作品の年1回の公演を2014年まで続けた。

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