1本の杭も打たせない、それが希望
タイトルの印象とは違って、内容は抵抗の記録である。米軍の新基地建設、オスプレイ配備反対に立ち上がった沖縄の人たちを追い続けた映画『ラブ沖縄@辺野古・高江・普天間』。新基地建設を止めようと、ボーリング用のやぐらの上で、体を張る辺野古の人々、夜明け前から工事車両の前に立ちはだかり、土嚢一つ、作業員一人でも止めようと現場に立ち続ける高江の人たち。一人、また一人とごぼう抜きされながら、抵抗を諦めない普天間の人々。彼らを排除しようとするのは、米軍ではない。地元の人たちを守るべき沖縄防衛局や警官たち、日本人なのだ。
観ているだけで怒りがこみあげ、へとへとになるのだから、現地の人たちの心と体が受ける苦しみはいかばかりか。共同監督の影山あさ子さんは言う。
「私たちは撮影が終われば、家に帰ることができる。でも住民たちはそこが生活の場なんです。背負う重さは比較にならないですよね。本当はきれいな自然や穏やかな暮らしもある沖縄ですが、いまはね、心優しい癒やしの映画は撮れないですね」
北海道の国際支援グループで働いていた影山さんが、映画製作に関わるようになったのは、陸上自衛隊の矢臼別演習場のど真ん中で40年以上暮らし続けた川瀬氾二さん(故人)との出会いがきっかけだった。
「どこにも行くところがなかった、って言うんですよ。自ら開いた原野の牧場が、川瀬さんの居場所、生活の場だったんです。反戦地主というイメージと全然違う、小柄でかわいらしい、謙虚なおじいさん。矢臼別を平和公園にするのが夢でした」。川瀬さんの願いや人となりを多くの人に知ってほしくて、当時知り合ったばかりの藤本幸久監督に「映画作りませんか」と持ちかけた。返ってきた言葉は「あなたが作るんだよ」。
続きは本誌で...