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インタビュー

『トガニ』を書いた、韓国のベストセラー作家

孔枝泳さん

  • 2012.08.05
  • 聞き手…柏原登希子
  • 書き手…栗原順子
  • 撮影…落合由利子

孔枝泳

痛みを感じてきたから書ける

 1本の小説が国家を動かした。小説の名は『トガニ(るつぼの意)』。今、公開中の韓国映画『トガニ 幼き瞳の告発』(本紙6月15日号で紹介)の原作だ。  『トガニ』は、韓国・光州市で起きた、聴覚障がい者学校での教職員による児童への身体的・性的虐待事件を題材にしている。小説はベストセラーになり、映画は460万人の観客を動員。激しい世論が起き、政府も動いた。事件は再調査され、児童への性的犯罪に関して時効の排除や厳罰化など法律が改正される。今年7月、一旦執行猶予がついていた加害者には懲役12年の実刑判決が言い渡された。  小説を書いたのは、韓国の売れっ子作家、孔枝泳さん。  「小説の波及に驚きましたが、他国での映画公開は韓国の恥を広めると言われ、良心の呵責もありました。でもどの国に行っても〝こういう事件はわが国でも起きている〟と言われます」と、映画公開と小説の日本語版(蓮池薫訳 新潮社)の出版記念で来日した孔さんは語った。  『トガニ』は、子どもたちの人権を踏みにじってまでも既得権を守る権力側(学校、警察、司法等)の癒着、それと闘う市民も鮮やかに描く。「密室」での児童や障がい女性への性虐待、権力側の癒着…どれも日本に住む私たちと無関係ではない。孔さんは「大きな権力を持つ側に対しては、それと同じ大きさの監視・制御装置が必要だ」と力を込めて話した。  裕福な家庭に育ち、幼いころから文章を書くのが好きだったという孔さんは、1987年、大統領選挙時の不正投票に反対するデモに参加し、警察に逮捕され、留置所に入れられる。この時の体験を88年、『日の上る夜明け』という短編小説に書き、文壇デビューした。その後、学校では「男女平等」を学んだ女性たちが、社会や結婚で女性差別に遭い、挫折していく様を描いた『サイの角のようにひとりで行け』(新幹社)や、貧困女性の人生をつづった『ポンスン姉さん』などが彼女を一躍フェミニズム作家、ベストセラー作家に押し上げた。 続きは本誌で...


コン ジヨン

1963年、韓国ソウル市生まれ。出版社勤務などを経て労働運動に飛び込む。『日の上る夜明け』でデビュー。自伝的小説『楽しい私の家』(新潮社)ほか著作多数。2001年韓国小説家協会韓国小説文学賞などを受賞。映画『トガニ』は、東京・シネマライズほかで公開中。

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