学び、闘うハルモニとともに
東大阪市にあるデイサービス施設「さらんばん」は、長栄夜間中学校と太平寺夜間中学校に挟まれた位置にある。利用者の多くはこの二つの夜間中学を卒業した在日のハルモニたちだ。代表の鄭貴美さんは語る。
「ふだんは嫁の悪口いったり、息子の自慢をしたり、普通のハルモニですけど、こと自分たちの権利、学ぶということになると闘う女になる。それがこの人たちの魅力ですね」
看護師だった貴美さんは、公立小中学校の課外授業で週1回程度、民族講師をしていて、二十数年前にはじめて夜間中学に通うハルモニたちと出会った。
1990年代初め、東大阪市の教育委員会は夜間中学の卒業年限に関する通達を出した。それ以前は50代、60代で中学生になったハルモニたちが何年かけても習得したいことを習得できるように卒業年限に制限はなかった。ハルモニたちは鉢巻きをしてゼッケンをつけて座り込み運動をした。その結果、卒業年限は原則的には6年、入院その他の事情があれば9年と制限されたが、学校の教室で卒業後も学べる市民運営の「うりそだん」を獲得した。
「女で朝鮮人で高齢者。日本社会で一番立ち上がらないとみられる存在ですよね。この人たちが勝ち取ってきた運動を二世三世のうちらが守らなければ」
そんな思いで10年前に立ち上げたのが「さらんばん」と「あんぱん」。高齢者の自立の維持を目的にした大阪府の街かどデイハウス制度を利用した。が、元気に歩き、自転車に乗っていたハルモニたちが年ごとに老いていった。デイハウスのままではハルモニたちの老いに対応できない。韓国語で話しかけ、韓国料理を作れるヘルパーもスタッフも目の前にいた。5年前「さらんばん」を介護保険のデイサービス事業に切り替えた。
「この人たちが諦めてきたこと、朝鮮人として奪われてきた時間を実現、再現したい」
「みなさん、ひっそりと生きてきたわけですから、ここでは朝鮮人であることを思いっきりさらけ出し謳歌する、そういう場所にしたい。それはほぼ実現できていると思います」と
続きは本誌で...
ちょん きみ
1957年生まれ。看護師、公立小中学校の民族講師を務める傍ら、99年から大阪市の社会福祉研修情報センターで介護などの在日専門の相談員に。2001年に在日の自立高齢者のための街かどデイハウスとして発足し、現在はデイサービス事業を行う「さらんばん」の代表。