家なき人のとなりで見る社会
- 小林美穂子 著
- 岩波書店1900円+10%
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生活困窮に陥った人の支援団体「つくろい東京ファンド」と「カフェ潮の路」で活動する小林美穂子さん(本紙2021年11月5日号1面)の新著は、ウェブマガジン「マガジン9」などの連載に加筆したもの。待ってました!
コロナ禍で困窮極まる中、セイフティーネットの生活保護に辿り着けない人々や在留許可がない外国人が、今日食べるのにも困る日々を送るのは国や行政の問題だ。生活が立ちゆかなくなったら権利としての生活保護で暮らしを立て直して―とサポートすべきなのに、「扶養照会」の押しつけに二の足踏む人続出。著者は怒り心頭に発し、“脂がのった”ギャグをかましつつ、あるべき社会を目指して、支援に走り回る。そして、「多くの人が関心を持たない限り、行政は変わらない」「国の言いなりになれば放置される」と断言して、発信していく。
閉塞感をどうにかしたい。誰もが生きやすい社会のために、本書から学ぶことが山ほどある。(三)
女性たちの声は、ヒットチャートの外に 音楽と生きる女性30名の“今”と“姿勢”を探るインタビュー集
平井莉生 著
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- 女性たちの声は、ヒットチャートの外に 音楽と生きる女性30名の“今”と“姿勢”を探るインタビュー集
- 平井莉生 著
- ソウ・スウィート・パブリッシング2400円+10%
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2022年Billboard JAPANのヒットチャートの女性アーティストは男性の半分。「音楽ヒットチャートにジェンダーギャップがある」ことに注目した著者が、30人の女性アーティストや音楽関係者にインタビュー。男女二元論の固定や“ヒットチャート”への懸念はありつつ、著者の「チャートは社会を映す鑑」の言葉に納得だ。
「軽んじられた経験」(eill)や「そこはかとなく舐められる」経験(春ねむり)。音楽フェスへの女性出演者の少なさ。そもそも数は少ないが政治的かつ力強いメッセージを発信するアーティストに対する?炎上”。#MeTooの影響を大きく受けたK-POPと違い、日本の音楽業界の特殊性が見える。チャートトップの男性アーティストを女性が支援する構造はなぜか-。
女性アーティストたちの知られざる思いも満載。「女性ラッパーが増えれば国会議員に女性が増える」の言葉に唸る。(ハ)
増補新版 生きのびるための犯罪(みち)
上岡陽江+ダルク女性ハウス 著
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- 増補新版 生きのびるための犯罪(みち)
- 上岡陽江+ダルク女性ハウス 著
- 新曜社1900円+10%
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2012年発行の同タイトルの旧版に「その後のあたしたち」を追加した増補新版。薬物やアルコールなどの「依存症」の女性たちの回復と社会的な自立を支援する施設「ダルク女性ハウス」を設立・運営する著者たちが、依存症や回復への道を語る。
ヤングアダルト向けの「よりみちパン!セ」シリーズの1つなので、読みやすくわかりやすい。薬物依存症は「犯罪」につながりやすく、依存症女性への社会のまなざしはとてもきびしいこと、虐待やDVなどの暴力の被害者である女性が多いこと、刑務所や少年院に必要なもの、社会にはどのような支援が必要なのかなどが具体的に書かれ、この問題に悩む人や、依存症への理解に役立つ。「人権」「権利」を求めること、他人に「助けて」と言うことがいかに大切かがよくわかる。
人生がつらいという人にもおすすめ。著者たちの率直な語りが胸にしみ、生きのびたいと思う時間をくれるはず。(く)