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ふぇみんの書評

なぜ日本は原発を止められないのか?

青木美希 著

    なぜ日本は原発を止められないのか?
  • 青木美希 著
  • 文藝春秋1100円+10%
原発推進に舵を切った岸田政権。この道に未来があるのか。原発はライフワークの一つという著者が、30年の集大成として書いた。  政治家や官僚に渡る「原発マネー」、経産省から電力会社等への天下りシステム、電力会社が規制側を取り込む手口など、原発推進の裏側を指摘する。  地震調査研究推進本部は宮城県から福島県沖での巨大津波を伴う地震が発生するという長期評価を2011年3月に公表する予定だった。だが電力会社は地震本部の地震評価を信憑性がないものとしようと画策し、安全対策のコストを削ろうとしていた。  そして、メディアが役割としてチェック機能を果たせば、安全対策にこれほど手抜かりもなく、事故後の対応でも被害を少しは抑えられたかもしれないと著者は自省を込める。  「復興」の現状、原発と核兵器の問題、新たに作り上げられる原発安全神話…日本における原発の現状が多面的に描かれる。原発ゼロのために必読の書。(ね)

原発事故、ひとりひとりの記憶 3.11から今に続くこと

吉田千亜 著

  • 原発事故、ひとりひとりの記憶 3.11から今に続くこと
  • 吉田千亜 著
  • 岩波書店960円+10%
『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』などで福島原発事故の被害者や避難者を取材し、伝え続ける著者が、事故から13年を前に、18人の〈これまで〉の記憶を記した。  被害の相談窓口にたどり着けず一人で途方に暮れた経験を語る人。日を追うごとに体調不安が増す人。事故直後、避難する人たちが那須塩原駅前で無造作に停めた車を見て緊迫感を感じた人。受けた親切にいつかお礼を言いたいと語る人。10年以上経ったからこそ言葉にできることがあり、時の経過とともに状況は変化もしていく。  国の無策と非情さが、地方行政や地域社会に浸透していく。区域外避難者の住宅問題や学校の放射線量の計測を行政が断る理由を知ると、一旦何かあれば、誰もが切り捨てられる可能性があると想像できる。本書は原発事故の被害を風化させないために、「無力で終わりたくない」と裁判を振り返る被害者の言葉を前に、私たちも、話を聞く・話をする・行動することが大切だと教えてくれる。(三)

差別する人の研究 変容する部落差別と現代のレイシズム

阿久澤麻理子 著

  • 差別する人の研究 変容する部落差別と現代のレイシズム
  • 阿久澤麻理子 著
  • 旬報社1700円+10%
「差別」について考える時、いつもモヤモヤが心に残る。差別は良くない、差別をしてはいけない、差別はなくすべきもの、そんな当たり前でいて誰も反論はできない言説が主流でありながら、いつまでたっても差別がなくならないのはどうしてなのだろう。  著者は、差別はする人(側)の問題である、そして差別はする人(側)によって勝手に作り替えられてきた、とハッキリ言う。時代とともに変容させられてきた差別の姿を分析していくのがこの本だ。  主に部落差別を取り上げて、いくつかの調査結果を示しながら差別の変容を追っていく。多くの人が「差別は良くない」と言いながら同時に「同和地区には住みたくない」と思うのはなぜなのか。差別は個人の心理的な問題にとどまらず、社会システムに組み込まれていく。したがって、問題解決には社会システムを変えることが必要だ。そのためには他社との会話と合意形成が不可欠だ、と言う著者の言葉に激しく同意する。(J)
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