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ふぇみんの書評

フェミニスト経済学 経済社会をジェンダーでとらえる

長田華子、金井郁、古沢希代子 編

    フェミニスト経済学 経済社会をジェンダーでとらえる
  • 長田華子、金井郁、古沢希代子 編
  • 有斐閣3700円+10%
 フェミニズム視点から経済学を捉える「フェミニスト経済学」は、すべての人の権利を保障し、暮らしぶりの良さの向上を目指す。ケアを中心に据え、経済学自体を問い直す学問の日本初テキストは、「理論と方法」と「領域と可能性」の2部構成。家事労働やケアの認識といった基礎的な知識はもちろん、男女間賃金格差をはじめジェンダー不平等を読み解く視点を得られる。  「理論と方法」では分析ツールとしての生活時間とジェンダー統計が興味深い。日本の労働生産性はG7で最低、無償労働に費やす時間は女性が圧倒的に長い…。政策立案のために必要なツールだとわかる。  「領域と可能性」は、労働の男女格差から、ジェンダー予算、福祉国家、金融、環境、災害まで幅広い。能登半島地震もあって、大地震の被災地における女性のレジリエンス(回復力)に関するコラムは必読。発災前からの活動が災害時を支えるということが、各国の事例から浮かぶ。(春)

魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?

ペク・ソルフィ、ホン・スミン 著 渡辺麻土香 訳

  • 魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?
  • ペク・ソルフィ、ホン・スミン 著 渡辺麻土香 訳
  • 晶文社1800円+10%
 少女たちに向けた「少女文化」の中にどのようなメッセージが含まれているのか-。「未来の女児たちを作っていく少女文化に強い関心を持つ」韓国の編集者(ペク)と、日本でアニメ研究の留学経験のある研究者(ホン)が、日韓の少女文化の足跡や内実を考察した書。  強くたくましく、白馬の王子でなく姉妹愛が重要で、権力まで手に入れたディズニープリンセスだが、プリンセスは皆「若くて美しい」。少女が心躍らせた闘う少女「セーラームーン」は、消費を是とする家父長制を揺るがさない「市場フェミニズム」を誕生させた。少女が支えたK-POPの少女アイドルは、「やせていること」と「美しさ」、幼児性と成人性を求められる-。他にもおもちゃ、ゲーム、YA小説や外遊びなど、少女向けとされ、それを楽しむと同時に取り込んでしまう危険な罠がたくさん。  しかし希望もある。少女らは抗い自ら動いている。何より大人の文化が変わることが大事というメッセージを胸に刻もう。(盟)

〈悪の凡庸さ〉を問い直す

田野大輔、小野寺拓也 編

  • 〈悪の凡庸さ〉を問い直す
  • 田野大輔、小野寺拓也 編
  • 大月書店2400円+10%
アーレントが、ナチス高官でユダヤ人虐殺を担ったアイヒマンの裁判について記した『エルサレムのアイヒマン』で、〈悪の凡庸さ〉とアイヒマンを形容したことは広く知られている。しかし、その言葉は本当に理解されているといえるのか。本書では、思想史、哲学、歴史学の研究者たちが、この〈悪の凡庸さ〉が社会に及ぼした影響を議論する。  アイヒマンは、職務に忠実な平凡な役人ではなかった。出世に貪欲で自己顕示欲が強く、自覚的な犯罪者であり、逃亡先ではナチ礼賛を繰り返した。裁判では〈凡庸な〉人間を演じていた。アーレントの考えた〈悪の凡庸さ〉の真意は何か…。  森友問題のような官僚の仕事が明らかになると、〈悪の凡庸さ〉が持ち出される。だが、アーレントは「政治においては服従と支持は同じもの」と書く。本書の議論を辿りながら、巨大な力を前にその波に呑み込まれないためには、個人がどう思考し、行動すべきかを考える。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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