WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から

玉置太郎 著

    兵役拒否の問い 韓国における反戦平和運動の経験と思索
  • 玉置太郎 著
  • 朝日新聞出版1700円+10%
マジョリティへの同化を求め、「違い」を見つけて排除する日本で共生社会とはどういうものだろう。住民の3割以上が外国籍という大阪の街で2012年に発生したフィリピン人母子無理心中事件をきっかけに、翌年生まれた移民ルーツの子どもの支援教室。ボランティアとして10年近く通った新聞記者の著者が、「違い」を豊かなものとして受けとめ、壁を乗り越える人たちの営みを綴った。  生活の苦しさを自身のルーツへの嫌悪感として表す子、言葉を十分に理解できず登校を嫌がる子…。複雑な実情をわかりやすい物語に回収せず、細やかに描写するほど、著者が築いてきた信頼関係が浮かぶ。取材者であり、ボランティアでもある自身の葛藤や、「もっと勉強したい」と留学した英国で難民の子どもを支援する団体でボランティアした様子も収録。多様なルーツを持つ人々が出会う場で、いかに「違い」を尊び合えるか。そこからしか共生は始まらないと突きつけられる。(春)

50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと

和田靜香 著

  • 50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと
  • 和田靜香 著
  • 左右社1800円+10%
 女性が年をとっても、安心して暮らしていくためにはどうしたらいい? #Kutoo運動をきっかけにフェミニズムに出会った著者は、そのヒントを探るため、政治参画における男女同数「パリテ」が20年間続いている神奈川県中郡大磯町へ行き、町議員や町の様々な人々に会う。女性が地域で繋がり、身の回りの生活の課題に向き合うことで、社会は変わる。大磯町では、それを支える環境が育まれている。  音楽をメインにライターをしてきた著者はコンビニ等のアルバイトも経験し、女性の賃金の安さや構造的差別にぶつかった。パリテ実現は、日々の生活の、底の底から湧き上がる思い。だから軽快な語り口でも心に響く。  フェミニズムという視点で、先ゆく先輩や自身の生き方を振り返る著者の気持ちに、同じ50代の私も思わず、うんうん、そうだよね!と頷いた。パリテ実現、一緒に達成しよう。(梅)

現代詩ラ・メールがあった頃 1983.7.1-1993.4.1

棚沢永子 著

  • 現代詩ラ・メールがあった頃 1983.7.1-1993.4.1
  • 棚沢永子 著
  • 書肆侃侃房2000円+10%
『ラ・メール』は、「女による女のための詩誌」として新川和江と吉原幸子が創刊、10年間続いた季刊誌である。本書のテーマは詩ではない。『ラ・メール』の編集者だった著者がつづる、ある雑誌の始まりから終わりまでの物語であり、「現代にもつながる熱きシスターフッドの記録」である。これが滅法面白い。  「女流詩人」でくくるなんてという批判を受けつつも、『ラ・メール』は「女性と詩の未来を織り上げていくための縦糸と横糸になる」ことを目指した。過去の女流詩人や忘れられた名詩を紹介し新人を発掘するのが縦糸、そしてジャンルを超えた女性たちとの交流を横糸とした(なんと第5号の対談ゲストは佐多稲子!)。  白石かずこの仕事ぶりや、『サラダ記念日』以前の俵万智の連作、日本ではまだ無名だった草間彌生による表紙など、「これ見て!」と言いたくなるエピソードもいっぱいだ。やまだ紫の誠実な態度、宮迫千鶴の辛辣だが率直な言葉。今は亡き才人たちを惜しむ気持ちが静かに残った。(雪)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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