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ふぇみんの書評

安楽死が合法の国で起こっていること

児玉真美 著

    安楽死が合法の国で起こっていること
  • 児玉真美 著
  • 筑摩書房940円+10%
 安楽死が合法の国の様々な衝撃事実を知り、胸がざわざわした。「無益な治療」論が世界で広がり、治療を中止し、医療者が患者を安楽死へと誘う…。もはや安楽死も緩和ケアの一つとみなす国も出た。安楽死の対象は「終末期患者」から、難病・認知症患者、重度・精神・知的・発達障害者、高齢者、子どもの患者へと拡大。「無益な治療」は臓器移植や医療コストとも繋がり、「生きるに値しない」とされた命は早々に切り捨てられていく。著者はこのような「すべり坂」現象は、「患者の自己決定」がしづらい日本で合法化されたら「崖」になるのではという。苦しむ患者や家 族の本当の願いに耳を傾けず、安楽死が当たり前のことと受け止められれば、医療者がいのちへの畏怖を失い、医療のありようを変質させると警鐘を鳴らす。  長年、この問題を追い続け、重度心身障害者の親の立場で医療・福祉問題も執筆している著者の分析は説得力がある。医療の根本まで重く深く問う書だ。(ん)

ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義

岡真理 著

  • ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義
  • 岡真理 著
  • 大和書房1400円+10%
2023 年10 月、イスラエルによる ガザへの未曾有のジェノサイド攻 撃が始まった。長くパレスチナ社 会や被占領を見続け、言葉で表現 してきた著者が行った講義(京都 と東京の大学)に加筆修正した書 が、緊急出版された。  ガザとは何かと、著者は問い、 語る。大規模な攻撃だけを切り取 るのではなく、占領の発端である 1948 年からの歴史的文脈を掘り起 こさなければならない。責任はど こにあるのか。根源には、欧米諸 国に守られてパレスチナの土地を 奪おうと攻撃し続けるイスラエル と、ガザでどれだけ のパレスチナ人が死 のうと痛痒も感じな い世界の人々の意識 があり、「憎しみの連 鎖」や「ハマスのテロ」 のような定型句でし か局面を捉えない報道にも問題が あると、著者は指摘する。  今私たちがすべきことは、ガザ を忘れてはならないこと。世界の 世論を動かすために行動すること。 戦闘を終わらせる。イスラエルと その後ろ盾の欧米を変える。人間 の力が問われている。(三)

佐多稲子 〈階級〉・〈性〉・〈戦争〉

谷口絹枝 著

  • 佐多稲子 〈階級〉・〈性〉・〈戦争〉
  • 谷口絹枝 著
  • 翰林書房3600円+10%
 今年は作家・佐多稲子生誕120 年にあたる。「佐多は昭和という時 代(マルクス主義、戦争とファシ ズム、敗戦による民主主義への大 転換)を、丸ごと生きた作家であ る」。本書は長年佐多研究をして きた著者による、佐多の近代とは 如何なるものであったのかをフェ ミニズム・ジェンダーの視点から 読み解く作家論的作品論である。  まず「序」で、佐多の生きた時 代と個人史を検証し、次にⅠプロ レタリア文学運動時代、Ⅱ文学運 動の敗走期から戦時下へ、Ⅲ戦後 の再出発、Ⅳ作家としての円熟期 へ、の各時代の作品 を分析する。  著者は、プロレタ リア文学運動の中で めざした「階級」の 解放と「女性」の解 放が、さらに「戦争」 協力をともなったゆらぎの問題と 絡まったところに佐多の近代が映 し出され、文学の磁場となったと 述べる。本書から、女性の主体確 立への格闘の中で、戦後婦人民主 クラブの発起人となり、共産党に 抗い、委員長を15年も続けた佐 多の姿が思い出された。(晶)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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