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ふぇみんの書評

兵役拒否の問い 韓国における反戦平和運動の経験と思索

イ・ヨンソク 著 森田和樹 訳

    兵役拒否の問い 韓国における反戦平和運動の経験と思索
  • イ・ヨンソク 著 森田和樹 訳
  • 以文社2600円+10%
徴兵制がある韓国で兵役を拒否した人は監獄行きだったが、2000年代から広まった兵役拒否運動は、18年の大法院違憲判決、20年の「代替服務制」導入を勝ち取る。本書は、兵役拒否者で、平和運動団体「戦争なき世界」の活動家である著者(1980年生まれ)の20年にわたる経験、思索、実践を記したエッセイ。  非難と重圧にさらされ、家族との軋轢も生む兵役拒否は、何をも怖れぬ強い意志の表れというイメージがあるが、著者の出発点は己の良心を見つめる過程で発見した、良心の脆さや弱さ。そこからクイア・フェミニスト等様々な拒否者との出会い、運動への批判や限界に向き合う中で、真に戦争させない平和運動へと深化・発展させるダイナミズムは圧巻。特に運動内外におけるフェミニズムとの出会いと実践を通じて、ジェンダーと深く結びついた軍事主義と男性中心主義を解体する取り組みは、日本のあらゆる活動団体、活動家に必読だ。進化を止めない著者らは今も社会を変革し続けている。(尹)

髪をもたない女性たちの生活世界 その「生きづらさ」と「対処戦略」

吉村さやか 著

  • 髪をもたない女性たちの生活世界 その「生きづらさ」と「対処戦略」
  • 吉村さやか 著
  • 生活書院2300円+10%
本書は「円形脱毛症の患者会」を主な調査フィールドとし、女性当事者が直面した悩みや対処戦略をていねいに分析している。  「髪がない」ことを隠しているという精神的負担やカミングアウトの難しさ、ウィッグを着けることで生じる身体的苦痛や経済的負担、人生選択における迷いなど、悩みは様々だ。しかし、仲間との出会いなどにより、多様な解決方法や生き方があると知り、自分らしい生活を見いだしていく人たちの強さや豊かさを感じた。髪をもたない女性たちへの医療・社会的支援の必要性を訴える活動をする人、「女性に髪がないこと」がタブー視されやすい社会に異議を唱える人もいる。  著者も当事者であり、自身の経験の正直な語りにも心を動かされた。円形脱毛症の人々の困難さを可視化し、髪がない人への嘲笑・差別や、「髪は女のいのち」と言われるような根強いジェンダー規範を問い直す貴重な書だ。(よ)

黙婆(もくば)

青木悦 著

  • 黙婆(もくば)
  • 青木悦 著
  • 発行 坂本鉄平事務所 発売 壱生舎2000円+10%
ふぇみんとも関わりが深い教育ジャーナリストの青木悦さんが渾身の思いで書いた小説『黙婆』。500ページを越える大作である。  2011年東日本大震災・原発事故で放射能汚染にみまわれた福島市。その3年後の早春、雪のパラつく早朝から話がはじまる。ベビーキャリーの中で置き去りにされた赤ちゃん、それを自宅の庭で見つけた民子と周囲の人びとの物語。赤ちゃんの親は誰なのか。民子のたちの探索がはじまる中で、キーワードは「黙婆」。語りあいつつ対面して涙を流すシーンが度々登場する。そしていろいろな事実が明らかになり、見えてくる、心も解放されていく。  著者は以前、教育問題をテーマに全国を講演してまわっていた。その間、胸の中に多くの問題がたまったのだろう。本書にそれらをすべてつぎこもうとしたのではないか。いくつも病をかかえ、からだが大変な中、よく仕上げられた。目次がないのに最初とまどったが、一気に読んでしまいたくなる。(天)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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