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ふぇみんの書評

本の栞にぶら下がる

斎藤真理子 著

    本の栞にぶら下がる
  • 斎藤真理子 著
  • 岩波書店1800円+10%
韓国文学の翻訳で有名な著者。でも、エッセイや本の解説も抜群におもしろい。待望の本書は、本にまつわるエッセイだ。  著者は幼い頃から本がたまらなく好きで、読書量も半端ないと想像する。本書には夏目漱石や田辺聖子など著名な作家もあまり知られていない作家も多数登場し、(著者自身が言っているが)内容が重苦しく古い本が中心だ。韓国・朝鮮文学に造詣が深い著者ならではの、李箱など朝鮮半島出身の作家が多く紹介され、植民地にした側とされた側の背景を読むことの大切さが伝わる。炭鉱に関する女性の詩歌、野上弥生子や吉沢久子ら女性作家の 「敗戦日記」には、命 を見つめる緊張感や、極限状況でも“生活を手放さない”強靭さがあるという。しみじみ納得。  読書の楽しみ方を綴る文章には著者のするどい感性と深い思考に裏打ちされた言葉がある。内容はずしりと重いが、ワクワク読ませ、本書を読むこと自体が至福の時間となった。(う)

ジェンダー目線の広告観察

小林美香 著

  • ジェンダー目線の広告観察
  • 小林美香 著
  • 現代書館2000円+10%
テレビや出かけ先で広告に触れる機会が多くなる年末年始こそ読みたい一冊。普段は「ノイズキャンセリング」することの多い広告を観察・分析し、広告が無意識に刷り込む価値観や規範を明らかにする。  白人コンプレックスと深く結びついた「脱毛一択」の価値観を示し、2010年代からはフェミニズムやLGBTQを表層的に利用する脱毛広告、美容広告における五輪と女性の「女神化」、ホモソーシャルな権力関係の強固さを暗示する缶コーヒー等の「デキる男」像と警察ポスター等の「正論おじさん」像、包括的性教育とはほど遠い性感染症予防啓発ポスター…。広告業界で働くフェミニスト・笛美、元国会議員の尾辻かな子との対談は、面白ければいいと作られる公共広告の公共性のなさ(笛美)や、成人年齢引き下げに伴い広告の餌食にされる若年層と広告リテラシーの欠如(尾辻)をあぶり出し、秀逸。  広告を意識的に観察しよう。著者が言うように本書はその「呪縛に対する護身術」となる。(盟)

生き延びるための女性史 遊廓に響く〈声〉をたどって

山家悠平 著

  • 生き延びるための女性史 遊廓に響く〈声〉をたどって
  • 山家悠平 著
  • 青土社2400円+10%
女性史研究者の著者自身に立ちはだかった非正規教員の雇い止め問題と、かつて遊郭で生きた女性たちの多様な〈声〉。本書はこの2つのテーマで構成されている。  遊郭で女性は逃げる手段を遮断されていたが、生き延びるためには受け身なだけではなかったと、著者は説く。読むことや書くことの実践を通して、内心を沸き立たせようとしていた女性たちがいて、彼女たちは世の中を見つめる側に立つことで、自らの状況を理解する力を得ていった。たとえば元娼妓の森光子は著書『春駒日記』で、遊郭の残酷な搾取のシステムを労働運動の文脈と結びつけた。また、娼妓の中には楼主の権力にひるまず、自らの道を切り開くために娼妓という職業を選択した女性もいたという。  女性たちの生きた〈声〉をたどることが、雇い止めで人間扱いされないと感じた著者自身とつながり始める。主体的に生きた女性たちから響く〈声〉が読み手にも届く。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
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