WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く

岸本聡子 著

    フ私がつかんだコモンと民主主義 日本人女性移民、ヨーロッパのNGOで働く
  • 岸本聡子 著
  • 晶文社1600円
本紙で、「地域自治と政治の女性化」を熱く語ってくれた(2019年2月25日号1面)岸本さんが、今夏、東京都杉並区(人口約60万人)の区長に選ばれた。本書は、その岸本さんの「『自分のことは自分で決める』を貫いて生きてみた」20年間の記録。  国際的シンクタンクで働いてきたというと、輝かしい学歴とキャリアの人と思いがちだが、岸本さんの歩みは地味だ。低賃金の国際NGO職員同士の国際結婚、生活のためのオランダ移住、仕事、子育て、交友…そうした自身の経験と「移民」「環境」「民主主義」「フェミニズム」といったテーマがきっちりつながっているので、現代の諸課題が読者にとって、より身近なものになる。  行政の長には、実績もあり視野も広いこうした女性こそが就くべきだと痛感するとともに、彼女に「希望を託す」のではなく、「自分たちの地域のことは自分たちで決める」責任があるのだと思った。(葉)

イン・クィア・タイム アジアン・クィア作家短編集

ベイ・リンサンガン・カントーほか 編 村上さつき 訳

  • イン・クィア・タイム アジアン・クィア作家短編集
  • ベイ・リンサンガン・カントーほか 編 村上さつき 訳
  • ころから2200円
 香港から届いた、アジアの9つの国や地域にルーツや関わりを持つ、クィア(セクシュアル・マイノリティ)を自認する作家17人による作品を集めたアンソロジー。  クィアでムスリムの女の子が自分を見つけ解放するアルハム・ベイジ(パキスタン)の「ラベルの名前」、あらゆるセクシュアリティを尊重するユートピアの街に避難するカップルの戸惑いを描いたジェマ・ダス(マレーシア)の「シャドーガール」、同性愛のムスリム女性の欲望を描いたアビエル・Y・ホック(バングラデシュ)の「砂時計」…。作品中で一人称が変化したりなかったりするのはクィア小説ならではか。この点、作品解説も含めて訳者のあとがきも秀逸。  各作品の世界に酔い、驚き、翻弄され、慰撫され、真新しい感覚になる。作品は「長い間黙殺され、強制的にミュートされ」てきたクィアの声であり物語。編者の「ここは安全な空間―サンクチュアリ」「さあ靴を脱いで、くつろいで。」の巻頭言に涙。(傳)

レイシズム運動を理解する 理論、方法、調査

キャスリーン・M・ブリー 著 鈴木彩加 訳

  • レイシズム運動を理解する 理論、方法、調査
  • キャスリーン・M・ブリー 著 鈴木彩加 訳
  • 人文書院4500円
著者は、1920年代に悪名を馳せたKKKから、今日の暴力的極右集団まで、アメリカのレイシズム運動とその中の女性たちを何十年も調査してきたベテラン研究者。しかし恐怖をともなう活動家たちとのやりとりに疲弊し、いったんは研究の継続を断念さえしたという。調査者を操作しようとする極右活動家との交渉やその感情的影響など、困難を率直に開示する本書は、調査研究に携わる人はもちろん、そうでない読者にも興味深いはずだ。  本書のもうひとつの読みどころは、極右運動において女性たちが果たす役割である。彼女たちは、ただ男性メンバーの恋人として補助的役割を果たすだけの存在ではない。KKKの女性たちはマイノリティーに関する悪意ある噂を流し、日常的なイベントを催して活動を持続させた。今日も多くの女性たちが個人的なつながりから運動にひきこまれ、人種差別的枠組みを通して女性の権利を主張するようになっているのである。(も)
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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