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ふぇみんの書評

フェミニズムってなんですか?

清水晶子 著

    フェミニズムってなんですか?
  • 清水晶子 著
  • 文藝春秋980円
女性雑誌「VOGUE」のオンラインサイトに執筆した連載をまとめた書。「フェミニズムを知って、何かやってみたくなる人の後押しをしたい」と、著者は書く。  まずはフェミニズムの歴史(第1波~第4波)を整理する。家父長制と女性労働・性暴力・婚姻・中絶や、インターセクショナリティ、リプロダクティブ・ヘルス/ライツと国家、自立と依存の受容などのほか、〈エンタメとフェミニズム〉も。入門向きで語り口は柔らかいが、鋭い指摘は知識の更新にも最適。今、フェミニストを分断する「セックスワーク論」は丁寧に賛否両論を解説する。  3つの対談が挟まれるがいずれも言葉を尽くし、読み応えあり。写真家の長島有里枝とは、フェミニズムとの出合いを語り合う。スポーツとジェンダー論の井谷聡子、作家の李琴峰との対談では「トランスジェンダー差別」を追究していて、必読だ。  本書に答えはない。〈あなた〉のフェミニズムをさらに深化させるために、ぜひ手に取って。(三)

凛として灯る

荒井裕樹 著

  • 凛として灯る
  • 荒井裕樹 著
  • 現代書館1800円
 1974年に開催された「モナ・リザ展」で、絵に赤いスプレー塗料を噴射して逮捕・起訴された米津知子さん。なぜ事件を起こしたのか。彼女の人生を日本の障害者運動史研究者の著者が約6年かけて聞き取り、物語るように構成した。  右足の障害をタブーにされ、“優等生”になって自分を守っていた子ども時代。その後全共闘を経験する中でウーマンリブに出会い、障害者であり、女であることに向き合い、問い、愛し、葛藤した足跡に、こちらも熱くなる。特に旧優生保護法改悪法案をめぐるリブと、「(中絶は)女のエゴ」とした「青い芝の会」など障害者(男性中心)とが、どんな議論や交渉を経て「共闘」に至ったのかの部分は、著者ならではの分析と相まって、手に汗握る。そして障害女性としての果たした役割や、失態も-。  題名が示すのは、「誰もが排除されない世界を」との彼女の願い。巧妙に排除と分断が進む今こそ、彼女の足跡に触れ、自らに明かりを灯したい。(成)

満月の下の赤い海

金石範 著

  • 満月の下の赤い海
  • 金石範 著
  • クオン3000円
韓国「済州島四・三事件」をテーマに書き続ける在日文学の巨人の近作3篇を収めた最新刊。数万人が惨殺された事実、運動を共にしながらその場にいなかった自分…。テーマは重く、凄惨な描写を読み通すのは苦しいが、粛然とした筆致に引き込まれて目を逸らせない。政治の暴虐を糾弾する堅固な刃は、作家自身の〈在り方〉にも常に向けられていて、その真摯な姿勢と「文学」への気概が、「四・三事件」や在日という〈特殊〉性を、この世界の誰もが抱える普遍的な課題にまで深めたのだろう。  表題作で、済州島にルーツをもつ若い女性ヨンイは韓国舞踊の身体性をとおして心の統一の手応えを得る。多くの意味をふくむ「赤」と、踊り手が纏う「白」の際立つ対比。老作家Kがヨンイに寄せる愛惜と希望。硬軟自在の語り口に、胸が震えた。  「書かねばならないことは書いた」(巻末対談)という本書は、金石範(キム・ソクポム)文学への入り口ともなる。(葉)
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