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ふぇみんの書評

人から人への交易 堀田正彦・民衆交易への挑戦

堀田正彦 著 オルター・トレード・ジャパン 編

    人から人への交易 堀田正彦・民衆交易への挑戦
  • 堀田正彦 著 オルター・トレード・ジャパン 編
  • 亜紀書房3000円
本書は2020年に亡くなった堀田正彦さんの遺稿集。演劇人であり、日本ネグロス・キャンペーンを立ち上げ、オルター・トレード・ジャパンの創設者として日本型のフェアトレードを確立、日本の食卓に安心安全な食べ物を届けてきた。その道は険しくどんな努力があったのか本書は述べている。  演劇人堀田はフィリピンで、農民が直面する貧困・不平等・抑圧・海外資本による収奪を主題にした芝居を農民自らが演じ、現実や無知を知ることで社会変革を目指す、農村演劇に魅かれた。その後始めた「民衆交易」は、貧困農民とのフェアな貿易へとつながっていく。砂糖の大暴落を機に日本の市民へ直接支援と協力を呼びかけた。今では「マスコバド糖」の草の根貿易をはじめ、バランゴンバナナなど、多くの安全で対等な協働による食品が、生協などを通し日本の消費者へ届けられている。  作る人、送る人、消費する人の人と人のつながり。顔の見える交易を堀田さんは目指した。(ぶ)

ことばの杖 李良枝エッセイ集

李良枝 著

  • ことばの杖 李良枝エッセイ集
  • 李良枝 著
  • 新泉社2200円
 本書は、芥川賞受賞作家である李良枝のエッセイ集。李は1955年、在日韓国人2世として山梨県に生まれる。民族意識に目覚め、伽耶琴、韓国語、韓国舞踊を習い、韓国と日本を往来しながら、小説を書き、韓国舞踊家でもあった。没後30年。享年37歳。  母語(日本語)と母国語(韓国語)が一致しない葛藤を、李は「ことばの杖がつかめない」と表現する。  エッセイは木蓮の詩、韓国舞踊、大庭みな子との対談等盛りだくさん。在日韓国人女性として、二つの国のはざまでアイデンティを求めて苦闘する姿を描く李の文章と、妹・李栄の「姉・李良枝のこと」を並行して読むと、繊細でエネルギーに満ちた彼女の姿がより鮮明に浮かび上がる。  特に印象深いのは、幼少から間近に仰ぎ見た富士山への思いを書いたエッセイと芥川賞受賞の言葉だ。重い内容の小説を書く小説家とばかり思っていた李良枝が、こんな瑞々しい文章を書く人だったのかと再認識した。(晶)

日米地位協定の現場を行く 「基地のある街」の現実

山本章子、宮城裕也 著

  • 日米地位協定の現場を行く 「基地のある街」の現実
  • 山本章子、宮城裕也 著
  • 岩波書店900円
日米安保・地位協定を研究する山本と沖縄県宜野湾市出身の新聞記者・宮城が、現場(基地)を訪ね日米地位協定の核心に迫る。取材先は、三沢基地、首都圏の米軍基地、岩国基地、自衛隊築城基地、自衛隊新田原基地、馬毛島、そして嘉手納基地だ。  沖縄の基地負担軽減を名目に米軍再編により日米共同訓練は全国に分散され、自衛隊基地の強化、米軍基地化が進む。そこには日常的な騒音、制限のない飛行や基地外の訓練、環境汚染、事件・事故の裁判権など地位協定の不合理な「特権」が見える。  ムチもある。住民投票で空母艦載機の移転を拒否した岩国市に対し、国は補助金を打ち切った。兵糧攻めにされた岩国市民は移転容認の市長を選び、いまや岩国基地は極東一の基地だ。  日本政府は、地位協定には手を付けず、より人口の少ない周辺地域に基地を押しやることで多くの人々の関心をそらし「解決」してきたと著者は書く。これ以上、小手先の解決を許してはならない。(ね)
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