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ふぇみんの書評

分解者たち 見沼田んぼのほとりを生きる

猪瀬浩平 著 森田友希 写真

    分解者たち 見沼田んぼのほとりを生きる
  • 猪瀬浩平 著 森田友希 写真
  • 生活書院2300円
ミミズやダンゴムシが硬い土地を豊かな土壌に変えるように、均質化し硬直した社会を変えるのは「分解者」だと、著者猪瀬は書いている。これを「街を耕す」と述べ、障害者や野宿など多様な人々が共生できる場は「分解」することで形成されるのだという。  本書は、埼玉県大宮郊外に広がる見沼田んぼとその周辺地域の歴史と、そこにある「様々な存在の蠢き」を描く。障害者の兄を持つ著者が子ども時代に経験した、教育を受ける権利を求める運動は、ただ単に不寛容な行政や学校との闘いではなく、見沼田んぼを背景とした福祉農園の運動と不可分の関係性を持つ。また相模原のやまゆり園の事件と戦中の相模ダム建設で亡くなった徴用工の、名もなく歴史に埋もれていく人々への視線も著者ならではの感性によるものだろう。本書はちょっと難解だが、完読後の自然と同化したような気分は清々しい。見沼田んぼの自然の豊かさやそこに関わる「分解者」たちの写真が温かい。(ぶ)

エトセトラ VOL.1 コンビニからエロ本がなくなる日

田房永子 編

  • エトセトラ VOL.1 コンビニからエロ本がなくなる日
  • 田房永子 編
  • エトセトラブックス1000円
昨年12月設立された「まだ伝えられていない女性の声を届ける出版社・エトセトラブックス」が、毎号編集長を代えて出すフェミマガジンの創刊号。編集長は漫画家・田房永子さん。  コンビニのエロ本に不快な思いをした人は多いだろうが、コンビニ各社は今年、販売をやめると発表。女性や子どもへの配慮とは言うが、東京五輪対策や売り上げ減もちらつく。ぬるっとなくなるコンビニのエロ本は一体何だったのか。小川たまか、北原みのり、武田砂鉄らのエッセイや、エロ本制作従事者、一般投稿など60人余の声で明らかにする。  少年アヤの言葉に心に巣くった恐怖心を言い当てられ涙したり、エロ本の女性制作者の立場に既視感を覚えたりし、私の不快感は「男性のエロはこうだ!」と決めつけた特定のエロだけが、堂々と公然と売られていることへの嫌悪感だと行き着いた。男性にも迷惑だ。あなたはどうだろう? 次号は「We?Love 田嶋陽子!」。目が離せない。(登)

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実

望月優大 著

  • ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実
  • 望月優大 著
  • 講談社840円
世界に「移民」の定義はない。そのうえ日本政府は外国人労働者が定住する移民政策は採らないと断言し、「外国人材」と呼ぶ。なんと冷たい響きか。ジャーナリストの著者が豊富なデータを基に、移民と外国人労働者の実情を示す。  1980年代から外国人政策は入管法改正によって変化し、過酷な労働条件の下で働く単純労働者を創出した。最近は失踪する外国人が増えている。人権無視の厳しい職場環境に加えて多額の借金もあり、稼ぎ続けるためには「不法」に去って、どこかで不法滞在者として働くしかない…。これを「進むも地獄、退くのも地獄」と著者は言う。  今年の入管法改正で「特定技能」資格ができ、定住の可能性が開いた。だが資格や在留期間の条件が厳しく、定住は不可能だと著者は分析する。使い捨ての外国人労働者観から脱却できず、移民を認めない国は、全ての人の人間らしい暮らしを認めない国だ。共存か否か。ふたつの道のどちらを取るか、迫られる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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