女は「政治」に向かないの?
- 秋山訓子 著
- 講談社1400円
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日本の女性議員割合は、衆議院で1割と世界から大きく遅れている。圧倒的な男社会の中(記者職も)、朝日新聞政治部記者として政治に張り付いてきた著者(現在編集委員)が、主義主張多様な7人の女性議員の、生き様から政治への姿勢、覚悟、熱い思いを聞き出し、国会の歪みをあぶり出す。
私たちには中川智子・宝塚市長、辻元清美衆議院議員、山尾志桜里衆議院議員はなじみが深いし、彼女らの突破力は魅力的。が本書が面白いのは、率直な語り口が魅力の野田聖子総務大臣や、マーケティング戦略に優れた小池百合子都知事など、政策の違いから普段私たちと接点が少ない女性政治家も登場することだ。男社会に媚びず、取り込まれず、自分らしくどう生き抜き、自ら掲げる政治目標をいかに達成していくかは、女性政治家や私たちの共通のテーマだ。
「候補者男女均等法」が成立した。女性政治家が増えれば、政策に多様性が生まれる、もっと政治が近くなると確信できる。(登)
ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治
藤井誠一郎 著
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- ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治
- 藤井誠一郎 著
- コモンズ2200円
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行政学の研究者が9カ月間の調査で体験したごみ収集の現場。新宿区の事例から清掃事業全般の、また地方自治の在り方を考える。
年末年始や台風・雪の日も酷暑の夏もごみ収集は待ったなしだ。汚臭や危険と隣り合わせの現場で、いかに手際よく集めるか、危険物の混入や分別ごみを瞬時に見極め、収集場をきれいに整える。狭い路地では人・車にも配慮。人々の生活と密着して日々格闘する現場だ。店舗や会社が出す事業ごみの扱い等、業務は複雑で、住民への指導、さらにはごみの廃棄や最終処分まで、環境問題としての課題も背負う。読みながら何度も、出せば終わりの気楽な自分の生活態度を省みた。高いスキルや問題意識も要求される職場で意欲的に働く清掃職員に、信頼を覚える。
だが、ここも民間委託が進み、さまざまな雇用形態の労働者が共に働く。公共サービスの民営化を深く憂うとともに、まずは、非正規や委託の労働者と正規職員の均等待遇実現を切に願う。(K)
原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償
被ばく労働を考えるネットワーク 編
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- 原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償
- 被ばく労働を考えるネットワーク 編
- 三一書房1700円
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被ばく線量登録管理制度への労働者の登録数は2017年3月末で約64万人。そのうち福島原発収束・廃炉作業で労災認定されたのはたったの4人。本書のこの数字は日本における原発労働者の“棄民政策”を象徴する。通常、労働者は仕事上被った災害は労災と認定される制度上の担保がある。しかし放射能被ばくについては労働環境と疾病との「因果関係立証」が困難であること盾に、労災認定は針の穴を通す隘路だ。
本書はこの隘路に挑む原発被ばく労働者の闘いの記録だ。その闘いこそが原発労働者の労働条件改善に大きくつながると痛感させられた。そもそも原発とは、被ばくする労働者の存在抜きに成立しないシステムである。被ばくに対する健康管理は、どの労働者より綿密に終生継続されるべきだ。しかし原発労働者が健康管理手帳の発行対象にさえなっていないという事実に出合うとき、原発を止めるしか解決策はないという思いが、心底湧き上がった。(宮)