なぜ、いま国体なのか。著者は国体を現代日本の逼塞状態を分析・解明できる唯一の概念とし、戦前・戦後の国体を歴史的に紐解く。
戦後「国体」は米国によって再建され、「象徴天皇制」が天皇を通じた円滑な占領統治の仕組みとして維持された。
経済では米国型新自由主義に従属し、政治では公然たる内政干渉が通用する日本。親米保守支配層は米国を事実上の天皇と仰ぎ、米国への隷属が「戦後の国体」となったと著者はいう。保守派の本質は「愛国=親米」であり、日の丸と星条旗が同居するのも不思議はない。
現天皇の「お言葉」は、こうした戦後国体への問題提起であり、「闘う人」だと著者は評価する。そして、いま歴史の転換ができるのは民衆の力だともいう。経済も政治も失われた20年を経て、安倍政権の下で議会制民主主義も崩壊の危機に立つ。これに立ち向かい、同時に私たちは戦後民主主義と一体とされる象徴天皇制の在り方も問うていかなければならない。(き)
どこで、誰と、どう暮らす? 40代から準備する共生の住まいづくり
近山恵子、櫛引順子、佐々木敏子 著
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- どこで、誰と、どう暮らす? 40代から準備する共生の住まいづくり
- 近山恵子、櫛引順子、佐々木敏子 著
- 彩流社1600円
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良い人生とは正直に生きることだという。本書を読んで、目から鱗のことばかりだった。多くの女性が重荷だと気づかぬまま、家族の重圧から逃れられず人生を失っている。私もそうだった。悲しみや辛苦を正直に認めれば、自身が理解できる。そのうえで人生設計ができれば、残りの人生も楽しく思える。自分を生きるとは、自分を理解することだと気付かされた。
本書は全共闘世代の女性運動の過程と、その時代を通して生き方を模索し続けた女性たちが辿りついた共同生活という帰結を、多くのヒントとともに描く。
家族といても孤独を感じることは多い。また独り暮らしはつらいと思うなら、残りの人生は気の合う友人と過ごしたいと考えてもいい。自分の人生は自分で選択すべきなのだ。楽しい人生が選択できるなら、そのほうがいいに決まっている。その選択の仕方をこの本は提供している。悔いのない人生を生きるために、選択するのは、あなた次第。(ぶ)
常磐の木 金子文子と朴烈の愛
キム・ビョラ 著 後藤守彦 訳
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- 常磐の木 金子文子と朴烈の愛
- キム・ビョラ 著 後藤守彦 訳
- 同時代社2000 円
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大正期のアナキストで、「大逆罪」で死刑(後に恩赦で減刑)となった金子文子と朴烈。本書はこの2人の愛と生き様を描く。
複雑で恵まれない家庭環境の中で育った文子は、日本の植民地・朝鮮で7年暮らす。親族から虐待を受け帰国。朝鮮から日本に渡ってきた朴烈に自らの境遇を重ね、強烈に惹かれ、愛を告白。2人は思想誌「太い鮮人」(後に「現社会」と改名)を発行し、虚無主義・無政府主義の運動をしていくが、関東大震災の2日後、治安警察法に基づく「保護」検束の名目で検挙され、十分な逮捕理由はなかったが裁判で有罪となる。文子は刑務所で恩赦状を破り棄て縊死したとされている。
国家、民族、家族からの束縛を脱しようと闘った文子の熱い生き方にほれぼれする。小説風で、2人に関する予備知識がなくとも読みやすい。地震、災害、ヘイトスピーチ、共謀罪、大量死刑、天皇代替わり…日本の現状に照らすと、2人の物語を今読む意義はきっと高い。(ぱ)