WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

家族幻想 「ひきこもり」から問う

杉山春 著

  • 家族幻想 「ひきこもり」から問う
  • 杉山春 著
  • 筑摩書房800円
不登校やひきこもりを経験した人、その親に取材を行い、そこから見える社会のありようと「家族」の姿に迫る書。  対象者には、不登校、ひきこもりとなったが“生還”した人もいれば、ひきこもりのまま30代、40代を迎える人もいる。当事者を支え続けてきた親も高齢となっている。  著者は自らが生きた「家族」の経験も重ね、ひきこもりの背景にある家庭=イエの規範を見る。高度化した産業社会で、人は計測・選別され配置される。将来に不安を感じたとき拠り所にするのは「イエ」の規範だ。しかし既に共同体は失われ、規範は、添おうとすればするほど当事者を苦しめてしまう。  著者が次世代に向ける提案は、家族を開き、社会につなぐこと。医療機関や就労支援など公的機関にできることは多くある。制度外にある民間支援の役割も大きい。  困難な現在をみんなで生き抜くために、できることはまだまだあると気づかされる。(梅)

母乳がいいって絶対ですか?

田房永子 著

  • 母乳がいいって絶対ですか?
  • 田房永子 著
  • 朝日新聞出版1400円
 実母との葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』や、『ママだって、人間』で知られる著者が、妊娠・出産・初めての育児を通して書いたエッセイ集。  妊娠中から植え付けられる、母乳をめぐる幸せなオーラ(医学的見地を無視した母乳賛美も)。障害や病気の子が生まれる可能性は「ないこと」とされる、受験のような出産。子どもは母と一緒にいたいものとされる(!)一方で、産後も美しくという脅迫。ママはパパより酒が飲みにくく、電車では謝ってばかり…。著書が切り込むのは、まるで「24時間営業のブラック企業にいるような」、社会にはびこる母性神話の呪縛。それを支える男の変わらぬ意識。一方、子どもに自分の夢を無意識に託してしまったエピソードも記され、母性の抑圧が次世代に続くことを示唆。  保育園も足りず、このままでは子どもを殺してしまう可能性もある、「母」業のリアル。すべてのヴェールをはぎ取ってくれる本書を手に、女たちと語りたい。(登)

誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術

明智カイト 著

  • 誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術
  • 明智カイト 著
  • 光文社780円
 市民が政治に関わる上で、選挙もデモも大切だが、「ロビイング」も重要だ。「たとえるならデモが北風で、ロビイングは太陽にあたるのではないだろうか。社会を動かしていくためにはこれらの手法をうまく組み合わせる必要がある」との著者の言葉に納得だ。政治を批判するだけでは何も変わらず、政治家と官僚と市民とが共に積み上がっている問題に優先順位をつけて集中的に解決していくことが大事ということに深く頷く。  政治家に圧力をかける業界団体のロビー活動ではなく、社会的弱者やマイノリティーのために、政治に直接働きかけるロビイングのルールやテクニックを本書では披露。自殺、病児保育、待機児童、いじめ、児童扶養手当、性的マイノリティーの問題などのロビイング実践者(著者も)たちの体験談を中心にした具体的な内容が記されている。社会変革の起動力と実践力となりうるロビイングは今こそ必要。ロビイング初心者に役立つ書の登場がうれしい。(う)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ