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ふぇみんの書評

ヒロシマの少年少女たち 原爆、靖国、朝鮮半島出身者

関千枝子 著

  • ヒロシマの少年少女たち 原爆、靖国、朝鮮半島出身者
  • 関千枝子 著
  • 彩流社1800円
『広島第二県女二年西組 原爆で死んだ級友たち』で、全滅した同級生39人の足取りを追い、安倍靖国参拝違憲訴訟の原告でもある著者が、被爆70年の今年、「すべて、思いを書き残したい」と記した本書。70年という間、著者はずっと原爆を、あの日を、同級生たちを、自分を、見つめ、問い続けてきた。  あの日、「防火帯」を作る「建物強制疎開」のため、広島中の中学校、女学校の1、2年8000人以上が爆心地付近に動員され、6000人以上が死んだ。著者が「悲しい」のは、この教育史上最悪の悲劇が、「平和大通り」が少年・少女の墓場だったことが、忘れ去られていること。ほかにも、生き残った者が抱く悔恨、著者自身も戦後50年に気づいた切り捨てられた朝鮮人の女の子たち、同級生の靖国合祀になぜ反対し、違憲訴訟の原告になったのか、建物疎開の本当の目的とは…圧倒的な理不尽さの前に、70年間尽きることのない怒りと悲しみを集約させた書。(登)

尾崎翠の感覚世界

加藤幸子 著

  • 尾崎翠の感覚世界
  • 加藤幸子 著
  • 萬書房2300円
  1970年代のある日、著者が古本屋で見つけたのは尾崎翠の『アップルパイの午後』という本。古本屋通いは、この本に出会うためだったかと思うほど引き付けられ、その後自らも作家となり、初のそして唯一の評論として90年に、世に問うたのが本書である(今年、復刊)。また、ここには尾崎翠の代表作『第七官界彷徨』など3篇も収録されている。  尾崎翠が書いていた時は、あの軍国主義へ向かう時代なのだが(満州国承認の年以降は事実上、断筆)、バブル期に読んでも、今読んでも違和感なく読めてしまう。ページをめくればそこには時代の大状況とは無縁の小宇宙があるからか? 独自の感覚を駆使して拓いたこの世界に到る道を著者の案内で辿ることができる。それは、地球にある命すべてに寄り添うディープなエコロジーにも通底しそうだ。  私の本棚にも40年前に買った『アップルパイの午後』がある。尾崎翠賛歌を書いた著者の気持ちは、私の気持ちでもある。(束) 

息子の生きた証しを求めて 護衛艦「たちかぜ」裁判の記録

「たちかぜ」裁判を支える会 編

  • 息子の生きた証しを求めて 護衛艦「たちかぜ」裁判の記録
  • 「たちかぜ」裁判を支える会 編
  • 社会評論社1400円
 護衛艦「たちかぜ」乗組員だった21歳の自衛官が、いじめを苦にして自ら命を絶った。「自衛官一人一人の命を軽んじるな」を根底に、人権侵害の実態を明らかにし、国に責任を認めさせた裁判。息子がなぜ自死しなければならなかったのか、息子の生きた証しを求める遺族と弁護団・支える会の闘いを詳述した8年間の記録だ。  一審で問題となった文書隠し等の隠蔽体質。それが現役自衛官の内部告発で明らかになり、高裁は自殺との因果関係を認め、国の安全配慮義務違反とした逆転勝利判決へ。資料編では年間約80人もが自殺する原因を追究し、集団的自衛権行使でリスクは更に高まると指摘。「切れ目のない安保法制の整備」に反対し、自衛官の人権を守る活動を強化すると結んでいる。  自衛隊の存在については様々な考え方があるが、秘密法・戦争法が制定され武力行使が現実的な今、自衛官の人権を守ることが戦争を止めることに繋がると裁判記録は語っている。(圭)
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