敗戦直後を切り拓いた働く女性たち「勤労婦人聯盟」と「きらく会」の絆
』伍賀偕子 著
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- 敗戦直後を切り拓いた働く女性たち「勤労婦人聯盟」と「きらく会」の絆
- 』伍賀偕子 著
- ドメス出版1250円
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「勤労婦人聯盟」は、敗戦後、おそらく全国で最も早く創設された女性労働組織だ。委員長で教員の関久子さん、日本生命労組で副委員長の小林美代子さん、戦中はバス運転手、戦後はバス車掌になった大阪交通労組の桂あや子さんらの活動がまとめられている。
「同一労働同一賃金」「生理休暇」の要求、配転解雇とのたたかいなど、どれも彼女たちの鋭い直観と行動力で成り立ったものだ。GHQの「婦人部二重権力論」「婦人部解体論」に反論し、「親組合」とたたかって婦人部を存続させた先達。彼女たちの多くがシングルで、「独身婦人聯盟」より10年以上早く「きらく会」をつくって、生涯支え合ったという。
結成当初から「勤労婦人」の中に「家庭婦人」も含め、働く女性は誰でも入れるようにしたことと、関さん、小林さんが婦人民主クラブの先輩でもあることは関係あるだろうか。(矢)
韓国家族 グローバル化と「伝統文化」のせめぎあいの中で平田由紀江、小島優生 編
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- 韓国家族 グローバル化と「伝統文化」のせめぎあいの中で
- 平田由紀江、小島優生 編
- 亜紀書房2000円
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1980年代以降、韓国では急激な社会変化が起こり、“家族”も大きく変容した。本書は、シングルマザー、国際結婚、離散家族の実態や、教育問題と福祉政策などを、グローバル化の背景や、家族主義イデオロギー、ジェンダー視点などから幅広く考察している。
韓国では、不動産と株式を通じてお金を稼ぐ“専業主婦”が中間層で増えていることや、早期留学が盛んだが、大統領令により義務教育段階の私費留学のほとんどが違法行為に当たる…などには正直驚いた。早期留学では家族別居(父親のみ国内に残るなど)による問題や、その背景となる「教育する母親」と「父親不在」など、性的役割分業意識が恒常化しているのだという。経済、家事、教育、介護の担い手として、女性の役割負担が過重となっている状況も透けて見える。
グローバル化と伝統的家族制度にゆれる隣国の家族の状況、さまざまな試みや政策を見ることは、日本にとって参考になることが大いにありそうである。(り)
- 「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ
- 平川克美 著
- ミシマ社1600円
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本書はビジネスの立ち上げを実践した著者による、経済論ではなく社会論だ。経済 “右肩下がり”をどう生きるか。
私たちの身の回りには不必要なものが溢れている。それは、「どんどん買わせよう」というグローバルな大国の経済戦略に、国ごと乗せられている帰結である。TPPもその表れ。規制緩和で大規模小売店舗立地法(大店法)が改正され、日本中に大型チェーン店が出現。それが地域経済を破壊し、個人商店が潰れていった。まるで「大きな恐竜が町をまるごと呑みこむ」ようだ。「脱・消費」(=生きるのに必要なものだけ買う)を求め、「地域で賢く買う」行為こそ、社会を変えることができると説く。
地元の小規模店は高い? いやいや、デフレなんて一部だけ。銭湯があるような商店街で身の丈にあった買い物をすることが、これからの時代に即した生き方だ。
さて、進むべき方向は見えたが、進み方はそれぞれの消費者が模索しなくてはならない。(三)