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ふぇみんの書評

3.11後を生き抜く力声を持て

神田香織 著

  • 3.11後を生き抜く力声を持て
  • 神田香織 著
  • インパクト出版会1800円
今までは普通の声でも生活できたが、3.11後はそうはいかない。「明るい未来を切り開こうとお腹の底から出す声」、それを「力声(ちからごえ)」と著者は名づける。福島県出身の女性講談師・神田香織さんが、悔しさで折れそうになる心を奮い立たせ、還暦の節目年に出版したのがこの本。  自身が10年以上続けているブログ「香方見聞録」をナビゲータに2011年から現在に至る軌跡を綴る本書は、10年暮れの「松井やより賞」受賞の喜びからスタートする。  3.11で一転した11年。本人の思いや行動と同時に、刻々と変化する状況が講談師ならではの筆致でリアルタイムに記されている。  「福島の祈り ある母子避難の声」や、狭山事件の石川一雄さん、和歌山カレー事件の林眞須美さんの無実を訴える新作講談、さらに田中正造を題材にした「谷中村の幽霊」など香織倶楽部のお弟子さんたちの力作も掲載され、付録では「力声の出し方」も伝授。(JO)

わが二十歳のエチュード 愛すること、生きること、女であること

高良留美子 著

  • わが二十歳のエチュード 愛すること、生きること、女であること
  • 高良留美子 著
  • 學藝書林3000円
  「言葉、言葉、お前は何だ、お前はいつ生れた」―詩人・評論家・作家として現在も活躍する高良瑠美子が、19~22歳(1952~55年)の間にスケッチ帳、便箋、日記帳などに書き続けた文章、メモ、詩、引用などを編んだのが本書だ。  東京芸術大学美術学部に入り学生の文化運動誌『希望(エスポワール)』に集中した濃密な時間、毋・とみのソビエト、中国入国、Yとの愛、ランボーとの出会い。慶応義塾大学法学部へ転学し、女性問題を考えはじめる。ボーヴォワール『第二の性』への批評、『ドイツ・イデオロギー』をとおした個の再発見、妹の死など、わずか3年間の記録だが、書くことを通して自身を確認し、省察するプロセスは著書の思考と創作の原点だという。「ジェンダー観」登場以前に女であることと人間であることの矛盾を真摯に問い、人間にとっての自然(身体)と自由の問題を考察する軌跡は、ひとりの女性の戦後精神史として興味深い。(風)

絵本作家のアトリエ3

福音館書店 母の友編集部 著

  • 絵本作家のアトリエ3
  • 福音館書店 母の友編集部 著
  • 福音館書店1600円
  絵本の持つ魅力―2世代、3世代にわたって読み継がれ、「生」への大きな肯定と自由自在な魂がある。本書は絵本を生み出した14人の作家のアトリエを訪ね、創作の秘密や人生について聞いた。  植物の命に向き合い、その命のサイクルを表現できるのは「絵本」だと確信した『くだもの』の平山和子。戦争を体験し、イラク戦争を批判する『さむがりやのサンタ』『風が吹くとき』のレイモンド・ブリッグズは、ぶつぶつと文句を言って悪態をつく。「ガキのころの、あの自由な魂をもっとふくらましてやればいい」と言う『きんぎょがにげた』の五味太郎。子どもへの畏れを持つからこそ、子どもへの徹底した観察と、仲良くなる仕掛けをつくる『はじめてのおつかい』の林明子…。  作家たちのまっすぐな仕事ぶりとそれを支えるアトリエや、周囲の自然。作家自ら焼いたアップルパイの匂いまでしてきそうな写真と文章で極上の時間が過ごせる。シリーズの1、2もぜひ。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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