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ふぇみんの書評

誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち

黒川祥子 著

  • 誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち
  • 黒川祥子 著
  • 集英社1600円
 子どもの虐待死が報じられるたび、「児童相談所は何をしていた?」と批判が起こり、殺した「鬼親」の糾弾と断罪が行われる。しかし、「死ななかった」子どもはその後どう生きるのか。本書は、虐待を子どもの側から捉えることを目的に、主に「ファミリーホーム」と呼ばれる、養育者の住居で5~6人の「要保護児童」を育てる場での、子どもたちと、寄り添う大人たちを追ったルポだ。  虐待の後遺症は計り知れない。自分の誕生日を知らずに育ち「お化けの声」に悩まされる子、フラッシュバックや耐えられないことがあると「解離」する子、怒りを突然爆発させる子…。虐待は脳の発達、器質に影響を与え、時に発達障害の症状を呈する。後遺症の酷さに目を覆いたくなるが、愛し受け止めてくれる大人と根を張れる場があることで、子どもが生き直し成長する姿に希望をみた。子どもが生きていてよかったという社会を作るのは一人一人の大人の責任。著者の言葉を噛みしめた。(登)

日本の奨学金はこれでいいのか! 奨学金という名の貧困ビジネス

奨学金問題対策全国会議 編

  • 日本の奨学金はこれでいいのか! 奨学金という名の貧困ビジネス
  • 奨学金問題対策全国会議 編
  • あけび書房1600円
 奨学金を返せない者が急増して社会問題になっている。非正規雇用が増加する中、返すあてもなく借りた「自己責任」などではなく、世界に比してずぬけて高い教育費こそが根本の原因であろう。  憲法26条が保障する教育を受ける権利とは、「金を払えば」という条件付きではない。学ぶ意志のあるすべての者に、その能力に応じた教育を受ける権利があるはずだ。しかしそれは、社会の支援があってこそ可能になる。  奨学とは学習を奨励することであり、そのための金銭的援助が奨学金であるはずなのに、多くは返済の義務を負う「教育ローン」でしかない。教育行政、労働環境、法整備など、複眼的なアプローチをしない限り、この問題は解決しない。本書はその扉を開いてくれよう。  返せずに困っている人は、遠慮なく「助けて」と叫ぼう。借りることをためらっている人も、勉学をあきらめてはいけない。この現状に対して怒り、貧困ビジネスと闘おうではないか。(た)

親元暮らしという戦略 アコーディオン・ファミリーの時代

キャサリン・S・ニューマン 著 萩原久美子 桑島薫 訳

  • 親元暮らしという戦略 アコーディオン・ファミリーの時代
  • キャサリン・S・ニューマン 著 萩原久美子 桑島薫 訳
  • 岩波書店3600円
「成人しながら自立しない子ども」は日本固有の問題ではなかった。6カ国で総勢300人(150組の親子)にインタビューをした本書では、それぞれの家族の事情や考えが語られている。  自立しない(できない)子どもを受け入れたり送り出したり、親の家はアコーディオンのように伸び縮みする。日本の親は嘆きながら自分の子育てを責め、イタリアの親は子どもとの暮らしを前向きに楽しむ。北欧諸国では政府の手厚い若者自立支援によってアコーディオンファミリーの出現が見られないなど、各国の「お国柄」が反映されて興味深い。  共通しているのは不況を背景にした不安定な労働市場である。グローバリゼーションが生み出す不況は先が見えない。「勝者」はあくまで企業体であり、労働者はわずかなおこぼれを求め、時には国境を超える生存競争に加わるしかない。アコーディオンファミリーというあり方を議論する以前に、「それしかない」という現実が重い。(葉)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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