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ふぇみんの書評

食を考える

佐藤洋一郎 著

  • 食を考える
  • 佐藤洋一郎 著
  • 福音館書店1200円
 著者は植物遺伝子学の専門家。食のハウツーものやレシピものでない、食と社会や環境を総合的に関連づける学問をめざしてエッセー風に書いたのが本書。  とは言っても、語り口は柔らかく読みやすい。ファストフードから農業生産に効率を求める「緑の革命」を説き、生態系の破壊とエネルギー問題に発展させる。原発と放射能汚染も、固有の食文化の消滅も、地方都市のシャッター街化も、関連がある。「食」や「食文化」は社会を映す鏡なのだ。  遺伝子組み換え技術を説明するのは科学者の目だ。ひょうたんが原産地アフリカからアメリカ大陸にどう伝わったか。日本の主穀はコメではない。ポテトとトマトの雑種ポマトはなぜ広まらなかったのか。日頃あまり疑問を抱かないような事柄への思いもよらない解説が興味深い。後半は賀茂ナスや、デュラム小麦などを挙げながら、「生物多様性と食」を熱く説く。たくさんの挿画が、内容をより身近にさせる。(三)

新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす もうひとつの安全神話

水野玲子 著

  • 新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす もうひとつの安全神話
  • 水野玲子 著
  • 七つ森書館1800円
 1990年代半ばからヨーロッパ各国でミツバチの大量死が報告され、2003年からは日本でも同様の報告がなされるようになった。やがて、トンボなどの昆虫やスズメなど野鳥の姿も消え始めた。「弱毒性」「害虫は殺すが人間には安全」と農協や農薬メーカーの宣伝で急速に普及したニコチン系殺虫剤(ネオニコチノイド)が、その原因とされる。  昆虫(および人を含む生物)の神経の働きを破壊する作用があり、放射性物質のように、目にはみえず、臭いもなく、土壌に染み通り長く残留する。だが「農薬ムラ」によって「安全神話」がつくられ、今も強固に守られている。  著者は、被害にあった養蜂家の証言、禁止へと動くヨーロッパ各国と遅れる日本の現状、パーキンソン病など神経難病の増加と農薬暴露の関係などを詳細に伝え、強く警鐘を鳴らす。  家庭菜園用の苗、鉢植えの花、住宅建材など、身近な所で知らずに使われているのも怖い。(束)

ぼくが百姓になった理由

浅見彰宏 著

  • ぼくが百姓になった理由
  • 浅見彰宏 著
  • コモンズ1900円
 バブル景気の真っただ中、大学卒業後、大手鉄鋼メーカーに勤めていた著者は、貧困や格差、環境問題など、市場経済の社会で感じる疑問から、有機農業に興味を持つようになる。脱サラし、埼玉の霧里農場で研修を受け、福島県会津地方の山間地に移住。まったく縁のない地に単身で飛び込み、有機農業を始めた16年間の体験記は、物語のようにおもしろかった。  著者は地域に溶け込んでいく中で、次々に新しい試みを始める。文化遺産と呼べる水路を守るためのボランティア受け入れ、地域通貨、ネットワーク等々。ここからみえてくるのは、農業の公共性、社会的役割。食料の安定供給、地場産業・地域雇用の創出、コミュニティーによる伝統的な景観・文化・福祉の維持など、農業の果たす役割は重要と訴える。原発事故で、福島の農業は大きな困難を抱えているが、マイナスからプラスへの前向きな視点に希望を感じるとともに、農業や食の在り方について多くの示唆を与える一冊だ。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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