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ふぇみんの書評

生殖技術 不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか

柘植あづみ 著

  • 生殖技術 不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか
  • 柘植あづみ 著
  • みすず書房3200円
 体外受精や顕微授精などの生殖技術が、不妊カップルにとって「福音」として喧伝され、体外に取り出された卵子や受精卵は、再生医療研究への道を開いた。が、その生殖技術は多くの問題を内包し、また生み出していく。医療自体のリスク、代理出産や提供卵子・精子における家族定義の複雑さ、依頼者と提供者の社会的・経済的格差、卵子の資源化、商品化、政治性、生命倫理、法律、経済まで、生殖技術がさまざまな問題を抱えていることを、著者は広い視野から鋭く指摘する。  卵子を提供する人と受け取る人は「何重にも生じる優位と劣位の捻じれの中に位置」づき、「この関係は、女性の連帯ではなく分断」であり、それを防ぐには、さまざまな立場の人たちが「意見も情報も交わせる必要がある」との見解には納得だ。不妊への偏見や社会・経済的格差が、「意思決定」や「選択」にいかに影響しているかの深い考察は、「自己決定権」の意味を問い直させてくれる。(り)

女性が政治を変えるとき 議員・市長・知事の経験

五十嵐暁郎、ミランダ・A.シュラーズ 著

  • 女性が政治を変えるとき 議員・市長・知事の経験
  • 五十嵐暁郎、ミランダ・A.シュラーズ 著
  • 岩波書店3500円
 なぜ日本は女性が政治的決定の場に少ないのか。本書は世界との比較から日本の状況を考察するとともに、全国約50人の女性の地方議会議員、首長、国会議員へのインタビューで構成される。  1975年当時は各国の女性議員比率は日本と大差なく、その後の歩みが違うという。しかし日本でも変化は起きている。1989年の参議院議員選挙の「マドンナ旋風」、その後は「変革を掲げる政治家が女性候補を変化のシンボルとして用い」た(小泉チルドレン、小沢ガールズのように)。  著者は女性の政治進出の背景として、①利益誘導ではなく、命や生命を大切にするライブリーポリティクス課題が浮上したこと②女性の教育機会や社会的経験の拡大③グローバルな女性運動の影響④有権者の好意的投票行動と分析する。  森山真弓(元法務大臣)から嘉田由紀子(滋賀県知事)まで50人のインタビューは、状況を切り開いてきた女性たちの思い・決断が分かり感動する。(衣)

市民がつくった電力会社

田口理穂 著

  • 市民がつくった電力会社
  • 田口理穂 著
  • 大月書店1700円
 南ドイツの人口約2500人のシェーナウ市で、チェルノブイリ原発の事故をきっかけに市民有志が始めた反原発運動から電力会社ができた。本書は、どのようにして市民運動から電力会社の設立に至ったのか、シェーナウ電力会社の現状と展望をレポートする。  1987年、「原子力のない未来を考える親の会」が発足、まず市民に省エネを呼び掛けることから始め、すべての原発を止め100%再生可能エネルギーにするというビジョンを実現するために何をするべきかを次々と考え出してきた。それまでシェーナウ市の電力供給を握っていた大手電力会社(ラインフェルデン電力会社)に対し、市から電力の供給権を得て、送電線を買い取るまでのあの手この手の攻防(アイデア!)が興味深い。  日本でも発送電分離、電力市場の自由化がようやく議論され始めた。制度の違いからシェーナウにそのままならうわけにはいかないが、触発されることは大いにある。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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