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ふぇみんの書評

花に水をやってくれないかい?日本軍「慰安婦」にされたファン・クムジュの物語

イ・ギュヒ 著 保田千世 訳

  • 花に水をやってくれないかい?日本軍「慰安婦」にされたファン・クムジュの物語
  • イ・ギュヒ 著 保田千世 訳
  • 梨の木舎1500円
 日本にもたびたび抗議活動や証言集会に来た韓国の元「慰安婦」のハルモニ、ファン・クムジュさんの体験を基にした小説。小学校5年生の少女ウンビが、近所に住むひとり暮らしのハルモニに出会い、戦中の体験を知る。  ファンさんが18歳で中国に連行されたのは、「天皇陛下の命令で」日本の軍需工場に行って3年間働く「娘供出」に応じたため。集めに来たのは地元の日本人班長の妻だった。物語の多くがハルモニの子ども時代にさかれ、慰安所での出来事は短い。それ自体が4年間の悪夢を示している。  自らも性暴力の恐怖を味わったウンビには、ハルモニの怒り、苦しみ、優しさ、強さがより深く理解できた。「悪いのはあなたじゃない」という言葉を、ファンさんもかけられたかったはずだ。訳者は、日本の10代の女性たちや、性暴力被害を誰にも言えずにいる人に読んでほしいと書いている。(矢)

コットンをめぐる世界の旅 綿と人類の温かな関係、冷酷なグローバル経済

エリック・オルセナ 著 吉田恒雄 訳

  • コットンをめぐる世界の旅 綿と人類の温かな関係、冷酷なグローバル経済
  • エリック・オルセナ 著 吉田恒雄 訳
  • 作品社2200円
 フランスを代表する経済学者による、コットンをめぐる旅の記録。「自然」「柔らかさ」の代名詞のように扱われる綿は、私たちになじみ深い素材だ。しかし、背後にあるのは、植民地支配と奴隷制、搾取の歴史である。18世紀、イギリス帝国の需要が増えアメリカでの綿花産業が発展し、アフリカからの奴隷労働がそれを支える。現在においても、多くの供給国で搾取労働や児童就労は後を絶たない。  綿には大量の農薬、化学肥料も使われる。発光クラゲやクモの遺伝子などが組み入れられ「改良」された綿は、もはや「自然」とはほど遠い。  適正価格での取引などを目的としたフェアトレード活動も、価格を適正に押し上げるほどの広がりを見せてはいない。  世界各地を巡る著者の、感性に訴えるような描写は時に詩的で難解にも思えるが、綿というモノの背後にある実態を知り、公正取引のために働きかけることの大切さを考えさせられる一冊だ。(梅)

死体は見世物か 「人体の不思議展」をめぐって

末永恵子 著

  • 死体は見世物か 「人体の不思議展」をめぐって
  • 末永恵子 著
  • 大月書店1800円
 ドイツでプラ標本にした死体を、世界で初めて一般公開したのは日本だった(90年代半ば)。その展示は学術・教育目的であっただろうか。その後、計45回日本各地を巡回し、世界各地でも展示された。その標本を、また展示会のセンセーショナルなポスターを見た人も多いだろう。皮膚を剥がされ、弓を引くポーズの人体標本、祈るポーズ、また性交させているものもあったという。日本での展示は、数々の行政機関、自治体、医療関係者が後援して開催された。  一方、アメリカでは、大手マスメディアが、「しかし彼らはどこから来たのか」と疑問を投じた報道をし、自治体、政府は展示に規制を実施した。フランスでも、政府内での議論があり、また反対運動の成果により展示を差し止めている。  著者は、この展覧会の経緯、問題点を明確に記し、死体の尊厳について問い、同時に生きている人の尊厳についても迫る。営利目的の医学と権力について、改めて問題化することだろう。(み)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 加入者名:婦人民主クラブ
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