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ふぇみんの書評

奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性

日本生態学会上関要望書アフターケア委員会 編

  • 奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性
  • 日本生態学会上関要望書アフターケア委員会 編
  • 出版社:南方新社 価格:2,000円
「ここは失われたかつての瀬戸内の原風景が残る『瀬戸内の楽園』だ」と専門家をうならせた、中国電力の上関原発建設の予定地の山口県・上関。中国電力による「環境影響評価準備書」が、この辺りで見かける希少生物に触れていないことに疑問を持った地元民の声を受け、専門家が調査をすると「生物多様性のホットスポット」だということが判明。以来、地元民、支援者を含め多くの研究者が訪れ、日本生態学会・日本鳥学会・日本ベントス学会は12の要望書を提出。本書は、その要望書も含め、上関の生態系の豊かさを豊富な写真とともに明らかにしたもの。
 専門家の案内で微細に見る上関の自然のなんと素晴らしく、希少なことか! スナメリやカンムリウミスズメだけではない。貝類、ゴカイの仲間、海の豊かさを支える山の植物、生物、昆虫たち。専門家らの興奮と裏腹に、中国電力や県の「生物多様性」の認識の甘さが際だつ。上関の自然をまるごと体感できる一冊。(登)



次世代に語りつぐ生体解剖の記憶元軍医 湯浅謙さんの戦後

小林節子 著

  • 次世代に語りつぐ生体解剖の記憶 元軍医 湯浅謙さんの戦後
  • 小林節子 著
  • 出版社:大和書房 価格:700円
戦時中、旧日本軍が中国で犯した人道的に許されない犯罪として、731部隊の人体実験はつとに有名である。しかし捕虜の生体解剖などは、ほかでも日常的に行われていた。1942年中国に赴任し、山西省で自らも手を下した元軍医、湯浅謙さんによると、華北の30カ所近い陸軍病院で同様の3000人以上にのぼるとされる医療人員はしかし、誰も告白しようとしない。本書は命を救うべく医者になった湯浅さんが、戦場でためらいもなく生体解剖をするようになるまでの心情の変化、また罪を悔いるきっかけとなった犠牲者の母親からの手紙、5年に及ぶ太原戦犯管理所での人間性を取り戻す貴重な日々について、著者の小林節子さんがていねいな聞き取りを行ってまとめたもの。
帰国後は自らの罪を進んで多くの人びとや若い医師たちに語り継ぎ、94歳になるいまも「医学と平和を結びつけてほしい」と願う湯浅さんの言葉は、償い続ける命の重みを教えてくれる。(室)

※湯浅謙さんは、2010年11月2日にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りします。湯浅さん、貴重な証言を残して くださりありがとうございました。



社会起業家スタートブック自分と社会を活かす仕事

百世瑛衣乎 著

  • 社会起業家スタートブック 自分と社会を活かす仕事
  • 百世瑛衣乎 著
  • 出版社:亜紀書房 価格:1,500円
困っている人を助けたい、社会のために役立ちたい。だったらそれを仕事にしてみよう。これが、社会課題をビジネスの手法で解決する「社会企業」の発想だ。その方法を伝授するのがこの本。
 まず、やりたいことを決める。そのためのアイディアを羅列する。その中から、実現できること、効果のあることを実際に始める。
 基本はこの3つ。今は大きくなっているNPOも会社も、最初はみんな、こんな事業があれば役に立つのにという誰かの「思い」から始まったのだ。あとは助成金や寄付金を得たり、マスコミや企業を活用したり…。  実例として、病児保育サービス業のNPOフローレンス、父子家庭への児童扶養手当支給実現に力を発揮したファザーリング・ジャパン、障害者が作る食品を販売代行するソーシャルエナジーなどが出てくる。自分だけもうけようと思っていないから、人が集まってくるんだなあ。
 これなら自分にもできるかも、と希望が生まれる本だ。(矢)



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