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ふぇみんの書評

女と絵本と男

中川素子 編

  • 女と絵本と男
  • 中川素子 編
  • 出版社:翰林書房 価格:1,800円
 はかなく美しいお姫様、冒険好きな腕白な男の子、いつもやさしい母、力持ちの父…。絵本にはその時代、その社会、作者(または訳者)のジェンダーバイアスが表れる。本書は「絵本にひそむセックス・ジェンダー・セクシュアリティ」を明らかにしたもの。落合恵子さんら絵本に深くかかわる7人による絵本ジェンダー論と、編者の大学での講義と院生レポート、36冊の絵本ガイドからなる。
 翻訳により「友情や誠実さや、裏切りの危険性についてのドラマ」が「二人のタイプの違う男の間で女性の心の揺れが引き起こす愛憎ドラマ」に変わった本もあれば(『キツネ』)、性別役割分担やマイノリティーの生きにくさを生む社会を痛烈に問い(『おんぶはこりごり』『Oの物語』)、時に鮮やかに軽やかに社会の規範を超えてみせるものも(『せかいいち大きな女の子』)。絵本ではタブーの母のセックスや性器、暴力を描いた『女の一生』など、絵本の威力を思い知り、また読みたくなる一冊。(登)

捨てられるいのち、利用されるいのち胎児組織の研究利用と生命倫理

玉井真理子、平塚志保 編

  • 捨てられるいのち、利用されるいのち 胎児組織の研究利用と生命倫理
  • 玉井真理子、平塚志保 編
  • 出版社:生活書院 価格:3,000円
 本書は、死亡胎児組織の研究利用について、米国・イギリス・ドイツ・スイスの議論を分析している。また、日本の死亡胎児と胞衣(後産)に対するまなざしの変遷も取り上げられている。
 欧米では1970年代から中絶胎児の研究利用の是非が議論されており、近年では再生医学分野での材料として注目を浴びている。米国では、胎児組織の研究利用容認は中絶を助長すると懸念されたという。
 日本では、受精卵の破壊を伴うES細胞研究に議論が集中し、胎児組織の利用については棚上げされてきた。死亡胎児の法的地位が曖昧であるため、研究利用についての議論に絞ることに無理があったからだという。この問題は議論されることが少なく、本書は貴重な一冊である。ただ日本における研究利用をめぐる議論については触れられるにとどまっているので、今後の掘り下げに期待したい。(穂)

外国人研修生 時給300円の労働者 2使い捨てをゆるさない社会へ

外国人研修生権利ネットワーク 編

  • 外国人研修生 時給300円の労働者 2 使い捨てをゆるさない社会へ
  • 外国人研修生権利ネットワーク 編
  • 出版社:明石書店 価格:1,800円
 外国人研修・技能実習生制度の創設から15年。この制度の問題を当事者の相談事例を交えて初めて体系的に詳説し話題を呼んだ前作に続く本書では、豊富なデータや裁判事例なども交え制度の全容と問題点が書かれている。
 最低賃金法違反の給料、強制帰国や旅券管理はもとより、劣悪な住環境、時給300円程度で月80時間を超える時間外労働、トイレに行くたびの罰金、性暴力など、研修生は様々な暴力や人権侵害にさらされる。背景を探れば90年代の規制緩和や国際的な労働市場の変化で危機に陥った製造業の現状が浮かび上がる。管理費・保証金などの名目で多額のカネをむしり取る中国を中心とした送り出し機関の問題もある。後半では行き詰まった制度の抜本的な見直しに向けた論点が整理されているほか、政策提言や関連法令集も掲載されている。改正に向け、理解を深めるのに大変役立つ一冊だ。(梅)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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