ギフティッド・チャイルド「自閉症」児からの贈り物
門野晴子 著
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- ギフティッド・チャイルド 「自閉症」児からの贈り物
- 門野晴子 著
- 発行:十月舎 発売:星雲社 価格:1,800円
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カリフォルニア・バークレーに住むエリックとジェニファーはオーティズム(自閉症)。公立小学校でIEP(特別教育計画)を受けている。2人を星の国のエイリアンと呼び日本から会いにくるのは"ババ"こと著者。本書には、そのメロメロぶりがたっぷり。これでもかと褒める孫自慢が止まらない。
2人を取り巻く教育環境に注目したい。バークレーでは、スペシャル・ニーズ(障がい)のサービスは教育を含めすべて無料。しかしイラク戦争以降は予算が減り、教育の質が低下しているという。だがバークレーには、学校と親の間にソーシャルワーカーが入り、ものを言える環境にしてくれるシステムがある。市民が声を上げ社会を変えた歴史的土壌、 "ネバーギブアップ!"の心が強みだ。
本書は槙坪夛鶴子監督により、映画化が決定。監督は「ファンタスティックな空間」をつくりたい、と意欲を見せているとのこと。現在、製作・上映協力も呼びかけている。(梅)
原発のゴミは「負の遺産」最終処分場のゆくえ3
西尾漠、末田一秀 編著
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- 原発のゴミは「負の遺産」最終処分場のゆくえ3
- 西尾漠、末田一秀 編著
- 発行:創史社 発売:八月書館 価格:1,200円
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原発を動かせば必ずできる放射性廃棄物。これを日本は再処理することにしているが、そこではさらに危険な高レベル放射性廃棄物が発生する。本書は原発のゴミを巡る多くの問題を明らかにしている。
国が廃棄物の処分場の公募を始めて6年。住民の危険なものは受け入れたくないとの必死の反対運動の成果により、未だにその場所は決まっていない。しかし六ヶ所再処理工場には各地の使用済み燃料が運び込まれ、再処理の準備が進められている。そこで発生する高レベル放射性廃棄物の行き場がなければそのまま青森県に保管され、県民にさらなる苦しみを押し付けることになりかねない。また、国の計画する再処理や地層埋め立てには私たちの電気代や税金から莫大なお金が使われる。こうした自分たちの消費する電力の陰にある事実をしっかり認識して、危険物を消費地以外の人たちに押し付けたり「負の遺産」を次世代に残すことに終止符を打つ見通しをつけなければと切に思う。(泰)
高齢者とジェンダーひとりと家族のあいだ
春日キスヨ 著
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- 高齢者とジェンダー ひとりと家族のあいだ
- 春日キスヨ 著
- 出版社:ひろしま女性学研究所 価格:1,200円
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ひとつひとつの事例を「自分にもあてはまるかもしれない」と、切実な思いで読んでいった。ひと言で「高齢者の孤独」などとはくくれない。たとえ二世帯住宅や同居でも子や孫と会話がない「家庭内独り暮らし老人」。体力が不安でこもりがちになり、友人とのつながりを失う人も多いという。介護保険があっても利用する経済力、社会関係力、情報収集力がある人ばかりではなく、制度だけで日々の不安や孤独が解消するわけでもない、と高齢者を取材し支援者たちと協働で研究を重ねている、著者の春日キスヨさんは強調する。
さらに大きな問題として、虐待加害者が90年代にもっとも多かった「嫁」ではなく、息子や夫など男性が中心になってきている点も。シングルの一人息子が認知症や疾病で要介護状態にある母親を看るケースも増えており、リストラや派遣切りとのかかわりも見逃せない。同時にジェンダーの視点からも問い直されるべき新たな問題を、本書は投げかけている。(室)