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ふぇみんの書評

環境教育 善意の落とし穴

田中優 著

  • 環境教育 善意の落とし穴
  • 田中優 著
  • 出版社:大月書店 価格:1,000円
 環境問題を「みんなの心がけ」や「ライフスタイル論」―元首相が電灯を取り替えるような―で終わらせてはいけないというのが著者の立場だ。環境危機を起こす真の原因をつかみ、多くの人に実行可能な対策を示すことが大事という。
 たとえば「ごみを減らそう」と使い終わったペットボトルやアルミ缶などの分別に協力している人は多いだろう。だがそれよりも、使い終わった容器の処理費用をメーカー負担にすれば、ペットボトルのような使い捨て容器は自然に減り、ごみ処理にかかる税金も減る、と著者は考える。
 オール電化の危うさ、企業には有利な電気料金制度、日本では植林より木を使うことが大事など知っておきたいテーマが並ぶ。「環境にやさしい」という言葉に誘われて「企業にやさしい対策」という落とし穴に入らないためにはお勧めの一冊だ。  本書は雑誌連載をまとめたものだが、著者は連載中の15カ月間に森の荒廃を止めようと国産材を使って家を建てる非営利の会社を設立し、その家を購入してくれる人を支えるNPOバンクも立ち上げたという。その行動力にも拍手。(束)

〈性〉の分割線近・現代日本のジェンダーと身体

荻野美穂 編著

  • 〈性〉の分割線 近・現代日本のジェンダーと身体
  • 荻野美穂 編著
  • 出版社:青弓社 価格:3,400円
 本書は、近・現代の日本で、「性をめぐる分割線」について、時代状況を背景に、どのように主張や議論がなされてきたのかを探っている。「女らしさ」と「男らしさ」、「女性美」と「男性美」、「女の身体」と「男の身体」、「家庭=女性領域」と「国家や政治=男性領域」といったテーマによる、9人の論文からなる。
 「第3章 文明化と〈男らしさ〉の再構築」では、1910年代の、廃娼運動団体の機関誌「廓清」を分析し、性欲の強さに男女差がないとしながらも、性欲を抑制する「意志の強さ」は〈男らしさ〉として表現されていることに着目。〈男らしさ〉の精神性を強調し、結婚制度の中の「神聖」な性欲でできた子どもは優れた子どもになるという、「人種改良」と結びつけて展開していたという指摘がおもしろかった。
 「ミス・ニッポン」コンテストと戦時下の身体を論じた第6章、戦後のМ検(ペニスの検査)の言説史を論じた第7章、婦人民主クラブのメンバーだった亡き母と自分を通して、「主婦」や自己表現する女性を論じた第9章など、どの章も具体例に即しながら分析していて、興味がわく。(り)

ヒトラーに抗した女たちその比類なき勇気と良心の記録

マルタ・シャート 著/田村万里、山本邦子 訳

  • ヒトラーに抗した女たち その比類なき勇気と良心の記録
  • マルタ・シャート 著/田村万里、山本邦子 訳
  • 出版社:行路社 価格:2,500円
 ナチス抵抗運動にかかわった女性といえば、日本でも映画が公開された「白バラ抵抗運動」のゾフィー・ショルが有名だが、ドイツ国内では抵抗運動の研究対象は主に男性で、女性たちの活動はあまり知られてこなかった。歴史家の著者は、今まで焦点が当たらなかった、ナチス政権に異を唱えた女性たちの抵抗運動とその人生の素描を精緻な調査でまとめた。
 女性らは有名・無名の芸術家やジャーナリスト、学生、教師、サロンの主宰者など立場は様々。ナチスの人種排斥思想の危険性や稚拙な経済政策、女性を教育や雇用から締め出し家庭に押し込める「女性の格下げ」政策などを、時にはヒトラーが政権を握る前から敏感にかぎ取り、積極的にであれ消極的にであれ、命を賭して異を唱えて処刑や国外追放、収容所送りになった。それを、抵抗運動に携わり強制収容所を生き抜いたハンナ・ゾルフは「当然の隣人愛に基づく行為」と表現した。様々な女性たちの勇気に触れることができることに喜びを感じた。「今日ここにいる私たちにも適用される人類の大問題」のためにも。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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