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ふぇみんの書評

韓国の福祉事情

金永子 著

  • 韓国の福祉事情
  • 金永子 著
  • 出版社:新幹社 価格:1,800円
 隣国にありながら、韓国の福祉事情の情報はなかなか日本に入ってこない。本書は韓国に留学した研究者が幅広い福祉施設を訪問、体感した韓国の福祉事情をまとめた好著である。
 訪問先は児童養育施設、社会福祉会館、母子家族自活短期保護施設など…。
 最近、韓国では「国民基礎生活保障法」が制定され、権利性の高い最低生活保障が実現したという。それも90年代の金融危機後、失業者や路上生活者が増えたため、労働組合や市民団体が連帯してこの法律要求を行った成果であるという。額は低い印象があり、扶養義務者の扱いも日本と同様のようではあるが。
 また要保護児童の発生原因別の数をみると8年前は婚外子が最も多く、最近貧困の原因が増えてきたという。婚外子の海外養子も多い。家族制度の厳しい一面が見える。
 一方、日米からの刺激を受けて障碍者の自立生活センターが各地に生まれた。
 総じて韓国の福祉事情も厳しい状況だが、同時にその逆風をはねのける動きも活発である。
 著者は在日朝鮮人二世であり、外国人問題などにも関心を寄せている。(衣)

ブルー・アワー

道下匡子 著

  • ブルー・アワー
  • 道下匡子 著
  • 出版社:三一書房 価格:1,900円
 小説は、1960年代のアメリカで学生時代を過ごした主人公リサが、恩師ポーターフィールド教授を囲む同窓会のため、シアトルへ向け旅立つところから始まる。
 反戦・黒人運動、フェミニズムの波とともに、ファッションや性、日常のすべてに革命が起きた60年代の輝かしい記憶。
 回想に対比して現在の主人公を囲むのは、絵のように美しい自然、感性とユーモア溢れる会話。その中心には、かつて向学心に大いなる揺さぶりをかけてくれた教授がいる。共に過ごすのは穏やかな時間。性欲に煩わされることのない、完全なる友人関係だ。
 しかし、ストーリーには、終始、かすかな不快感がつきまとう。若さを強調し続けるように降り注ぐ陽光、鮮やかすぎる木々や海の色。何事かを語ろうとすればそれとなく口を塞ぐ周囲の人々の分別の不気味さ…。この違和感は何なのか。
 やがてその正体は見えてくる。理知と崇高を装い、敬愛からなおも支配を得ようとする男の性の、老齢の姿である。
 繊細な意識の揺らぎを巧みに描く風景・心理描写は秀逸。ラスト部分、すべての混乱が静謐に集約される、青い夜明けが印象的だ。(梅)

アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?

スーザン・ジョージ 著/森田成也、大屋定晴、中村好孝 訳

  • アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?
  • スーザン・ジョージ 著/森田成也、大屋定晴、中村好孝 訳
  • 出版社:作品社 価格:2,400円
 食糧・環境問題、第三世界問題、グローバリゼーション問題などの理論的リーダーである著者。
 本書では、近年国際社会の合意を無視し、単独主義に走る傾向の顕著な「アメリカ」の内実と形成過程を詳細に記した。「オバマ政権でアメリカが変わるのではないか?」。甘い期待を大きく裏切る事実の数々。
 今のアメリカを支配する右派文化―世俗的には「新保守主義」、宗教的にはキリスト教右派―が遅くとも1970年代から、「4つのM」(マネー、メディア、マーケティング、マネージメント)を駆使し、着実にアメリカを乗っ取る戦略を実行してきた。何十億ドルというお金がシンクタンクや財団、政治家、弁護士、学者に与えられ、「目的」を遂行させ、草の根ではメディアや教育プログラムを通じて国民の6割が神による「創造説」を信じるまでにしてしまう。
 著者はこの流れに反対するすべての人が、右派の支配の手法に学ぶべきだと力説する。「正しさ」だけでは負ける。この発想の転換。私たちはどうする?(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
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