自然と社会をむしばむユーカリ植林


ユーカリ植林

 現在の日本とブラジルの関係には大きな問題が山積みになっています。
 例えば、その見逃せない問題の一つが、紙パルプ生産のためのユーカリ植林です。七〇年代後半以降、日本の製紙会社、商社、政府が一体となって、日本で消費する紙パルプ生産のため、ブラジルにユーカリ植林を進めてきました。ユーカリはオーストラリアなどの限られた乾燥地帯に自生する樹木ですが、成長が早いため製紙企業から注目され、大量植林プロジェクトがブラジルで進められたのです。

 ユーカリは土壌を変質させ、他の植生の生存を不可能にしてしまいます。自然環境に与える影響が甚大なため、米国カリフォルニア州などでは植林が禁止されているほどです。
 実際に植林されている地域で農業を営む人たちへの聞き取り調査をしたところ(一九九四年)、ほとんどの人が水資源の枯渇を訴えていました。ただし、ユーカリ自身の問題以上に、植林会社が守らなければならない水源地にも法律を無視して、無差別的にユーカリを植えてしまっていることによって水資源が枯渇してしまっている可能性も指摘されました。地元は完全に企業城下町化しており、法律はあってない状態になっています。

 しかも日本の援助で大量に植林されているユーカリは、紙パルプ用に遺伝子加工されたクローンです。こうした遺伝子加工が生態系にどのような影響を与えるか十分な研究もないまま、地域全体がすっぽりユーカリに植えられてしまっているのです。

軍警察と対峙する土地なし農民

 また、ユーカリ植林は社会問題も引き起こしています。紙生産に役立たない原生林が焼き払われ、先住民や小農民が植林地域から追い出される事件が頻発しているのです。林業が機械化されると職が減りますし、自然と共生していた小規模農家も農耕が続けられなくなります。そして、低賃金労働者となるか都市に流出するかという、悲劇的な選択を迫られているのです。

 この破壊的な植林を、ブラジルの民衆運動は「緑の砂漠」と呼んでいます。つまり、豊かな植生を誇っていた大地が、ユーカリしか残らない砂漠になってしまうからです。
 さらに、事態を深刻にしているのが、九七年に開催された気候変動枠組み条約京都会議です。この会議で、森はCO2を減少させるという面から、植林が環境への取り組みとしてクローズアップされたからです。しかし、紙パルプなどの生産のために行われている植林は、自然林を回復するために行われている植林と異なり、むしろ自然の循環を破壊してしまいます。大きな視野で見るならば、このタイプの植林は決してCO2減少に役立ちません。
 京都会議以降、紙パルプ生産と直接関係のない企業までが、「環境問題への貢献」として製紙会社の植林に資金提供するニュースがたびたび流れていますが、出資企業は実態を調査し、即刻この手の植林プロジェクトから資金を引き上げるべきでしょう。それがむしろ本当の環境への貢献だとarcoは考えます。                (T)

最終更新: 1999/07/31


|Home|ブラジルの運動紹介|ユーカリ植林|大地を破壊する大豆|ブラジル音楽|リンク|
Powered by JCA-NET arco Logo
Copyright (C) 1998-1999 arco. All rights reserved.
arco@jca.ax.apc.org