イスラエル「核兵器保有」を見逃すアメリカの二枚舌

イスラエル核疑惑国って何?


1998.6.3 入力

イスラエルを見逃してパキスタン核実験だけ抗議の暗愚

 戦前からの大手紙、つまりは天皇と同様の戦犯逃れ既得権あぐら組、3大紙こと「読売ヨタモン、毎日マヤカシ、朝日エセ紳士」、これに戦後再編組の「財界紙」、産経、日経、以上の中央5紙のパキスタン核実験論評、とりわけイスラエル「核疑惑」問題の取り上げ方を読みくらべてみた。

 一応、全紙がイスラエルを「疑惑国」としていた。これはパキスタン核実験の唯一の功績かもしれない。

 予想外れではなく、案の定というべきなのは、ユダヤ資本でイスラエル支持のニューヨーク・タイムズを鑑と仰ぐ「朝日エセ紳士」の扱いが、一番小さかった事実である。まさに「エセ紳士」本領発揮の場面だ。

「右」の読売、産経の記事の方が、朝日よりも的確にイスラエルを擁護するアメリカの二枚舌、ダブル・スタンダ-ドを指摘していた。

 結局、自宅で取っている「財界紙」、日経の記事が一番詳しかった。これは、この問題に限った現象ではない。「朝日エセ紳士」を好む「心情左翼」の怠け者よりも、「財界紙」を必需品と心得る過労死志願者の方が、より正確に世界情勢の把握を必要としてるのである。

 日経は別項で指摘したように、パキスタン核実験の翌朝、1面トップで「世界で7番目の核兵器保有国」と記した。従来の連合国(国連の正しい訳)安保理常任・拒否権独占5大国の「米国、ロシア、英国、フランス、中国」に、実験したばかりのインドで6、パキスタンで7の勘定である。

 ところが、3面では、「他の疑惑国」の筆頭にイスラエルを挙げ、こう記していた。

「核兵器保有が最も強く疑われているのはイスラエル。ハイテク国家の同国は、既に百~2百発程度に核弾頭を持つと推定され、核弾頭を搭載可能な中距離弾道ミサイル「エリコ2」を80年代後半に開発済みという」

 翌日から連載を始めた「核連鎖の危機」の「中」(1998.5.31)では、「イスラエルの対アラブ政策に批判的なパキスタンが手にした『イスラムの核』」が「火薬庫、中東」に「特別な意味をもたらした」とする。

 翌日の「NEWSインサイト」(1988.6.1)では、もっと詳しくなる。

「アラブでは、戦術核を保有しているといわれながら核拡散防止条約(NPT)調印を拒んでいるイスラエルとの対比で、パキスタンの核の意味を考える。主要国がパキスタンへの強力な制裁を簡単に打ち出しにくい一因は、『ではなぜイスラエルはおとがめなしなのか』と二重基準の問題が蒸し返され、中東外交の障害が増えることだ」

 大手紙報道はどうあれ、どの国でも、イスラエルの「核兵器保有」を「疑惑」としていて位置付けてはいない。当然、「事実」として考え、その前提の上に立って行動している。別項でも指摘したように、武器の開発は本来、重要な軍事機密の属する。それを諜報活動で察知し、対抗手段を考えるのが、軍事の基本である。

 この原則に立たなければ、世界情勢を正確には分析できない。

 パキスタン核実験に抗議するのも結構だが、「地獄への舗道は善意の敷石で敷き詰められている」ともいう。

 少なくとも、片手落ちである。1956年のスエズ危機、または第2次中東戦争の際には、同時に発生したハンガリー事件への対応が問われた。ワルシャワ条約機構脱退などを決定したのハンガリーにソ連は2度も侵攻した。ソ連を批判せずに、イギリス、フランス、イスラエルのスエズ出兵を批判するなかれ、と主張した東大学生細胞が、ソ連擁護(のち訂正)の日本共産党本部と対立し、本部内「暴力事件」の名目で集団除名に至り、それがまた全学連の分裂にまで発展した。

 国際的な事件の評価における「公平性」とは、それほどまでに重要な問題なのである。「不公平」だと思われる基準には、誰も従わない。従っているように見える場合も、実は、ただ単に、仕方なしに表面上、力に屈しているだけなのである。

「飽食ニッポン」の自称平和主義者が、最早実験を必要としない段階で核優位を保持しようとするアメリカ、そのアメリカが二枚舌で擁護し続けるイスラエルを、まったく非難しないで、結局のところ、米日政府と同じ声明を発し、いじめられ役の「イスラム」の誇りを掛けて核兵器開発に邁進した「第3世界」だけを非難している有様は、以上のような歴史の教訓を忘れ、または無知な暗愚極まりない仕業であり、暗澹とする見苦しさである。

 この際、原点に立ち戻って、まずアメリカの「核拡散防止」政策の欺瞞をこそ、決然と追及し直すべきである。アメリカ大使館、イスラエル大使館への抗議のあとに、インド、パキスタン大使館にも行こうという呼び掛けならば、私も参加する気になるが、今のような短絡「免罪符ねだり」運動には、鼻水を引っ掛ける気も起きない。

 ひるがえれば、ソ連崩壊の原因の一つにも、アメリカとの核競争があった。どちらが最初に仕掛けたのかは、いうまでもないことだ。

 むしろ、この際、アメリカとイスラエルをこそ、飢餓状態すれすれの第3世界の貧しい大国を核開発に走らせる元凶として、告発し直すべきである。


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